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講演

カリフォルニア州における油汚染野生生物救護ネットワーク・官民共同で行われる対策活動について

カリフォルニア大学デービス校野生生物医学科準教授

油汚染野生生物救護ネットワークプログラムディレクター

ジョナ・マゼット

 

要 旨

 

油流出事故による危険からカリフォルニアを守るために、レンパート、キーン、シーストランド油流出事故防止および対応に関する法律(Lempert-Keene-Seastrand Oil Spill Prevention and Response Act of 1990)が1990年に成立しました。この法律はカリフォルニア州魚類鳥獣保護局油流出防止対策(California Department of Fish and Game, Office of Oil Spill Prevention and Response,以下OSPR)の室長に、海鳥、ラッコおよび他の海棲哺乳類の救護リハビリテーション施設を設立することを要求するものでした。油に汚染された野生生物の救護に関するこの要求事項は、その後の3度の法改正によって再確認されました。

カリフォルニアの油汚染野生生物救護ネットワーク(Oiled Wildlife Care Network,OWCN)の活動目的は、自然環境の中で石油製品にさらされた野生生物が自然に帰るための必要な最高の治療を施すことです。そのために恒久的な野生生物のリハビリテーシヨン施設や油流出事故に対応できる訓練された人材を、いつ油流出事故が起きても対応できるような形で提供しています。このシステムは連邦、州、地方自治体、事故原因者、そして油流出事故対応の全ての局面に関係する事前に特定されたNGOなどの協力によって成り立っています。

このカリフォルニアのシステムの場合、連邦政府の自然資源トラスティー(Natural Resource Trustee,以下トラスティー)派遣機関、大学や研究機関、石油会社、石油運送業、石油海運業、そして野生生物リハビリテーション団体などの代表者にネットワークの組織に参加してもらうことで統合され、コーディネートされた機能的な事故対応の体制を作り上げました。組織を構成すること以外に、危機に瀕した自然資源を事前に特定しておくことも統合された事故対応のための準備としては欠かせません。危機に瀕した種に関するこうした情報は海上交通の情報と組み合わせられ、野生生物が重大な被害を受ける可能性が最も高い場所を特定するために利用されます。こうした情報によって、訓練されたボランテイアや野生生物のリハビリテーション施設を配置すべき場所も明らかになります。

油に汚染された野生生物の治療施設のデザインは、一般に野生生物の予想搬入数と油流出時以外の平時にその施設がどう利用されるかによって決定されます。油流出事故に対処するために設計された施設は最低限の広さがなければいけませんし、また野生生物の治療やリハビリテーション活動に必要な全ての要素を満たすものでなければなりません。油に汚染された野生生物に対応するための機能的な設備として最低限必要な要素は次の通りです。受け入れや一般身体検査や証拠収集などに必要なスペース、隔離室のある動物治療施設、屋内の野生生物用の保護箱やケージ、食料保管庫と調理室、洗浄およびすすぎのスペース、屋内の乾燥用のケージ、ボランティアのための訓練スペースや食堂や手洗い、複数の電話やFAXの回線と会議スペースを備えた管理事務所、倉庫、屋外のプールやケージ、病理解剖室、大きな駐車場へのアクセスなどです。

 

 

 

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