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資源のトラスティー派遣機関として事前に指定されており、その管轄下にあるOSPRが主な事故対応組織として活動します。つまりカリフォルニア州ではトラスティー派遣機関と事故に対応する機関が同一のものですが連邦レベルでは、トラスティー派遣機関と事故対応組織が同一ではありません。魚類、野生生物のトラスティー派遣機関(例えば米国魚類野生生物局(U.S.Fish and Wildlife Service)や海洋水産局(National Marine Fishedes Service)等)が自然の管理者であり、事故対応組織である米国沿岸警備隊とは別のものです。

 

カリフォルニア州ではこの2つの役割を1つの組織が担うことで、事故対応の最中や事故後の魚類野生生物への対応の全てを一括して行うことができます。私の個人的意見では、自然の管理と事故対応を同一の機関が担うという仕組みによって、事故対応の期間中、全ての重要な環境の要素に一貫して、しかも完全に対応できることになると思います。この事故対応の期間というのは、事故発生から法律で事故原因者に義務づけられている環境の完全な回復までを意味します。さらにこの仕組によって、事故原因者である石油業界は事故を起こした際に自分たちの環境回復責任を果たしやすくなります。何故なら流出事故が起きた時に事故原因者がどの機関と連絡をとればうまく対応できるかが明確になっているからです。回復責任というのは、油の流出が自然資源や野生生物に直接または間接的に必ず与える悪影響を回復させる責任のことです。

 

OSPRが所属するカリフォルニア州魚類鳥獣保護局はまたカリフォルニア州の漁業および養殖地を管轄する当局でもあります。ですからそれらの問題点も事故対応の際に確実に取り扱われることになります。OSPRの室長の法律で定められた責任範囲は、レクリエーション、海岸の使用、釣り、観光などへの流出事故による被害に短期および長期に渡り十分に対応し、その損害を補償する責任も含みます。このように、OSPRという一つの組織が油流出事故対応で懸念しなければならない問題を全て一括して取り扱っています。

 

事故対策統轄体制でまず初めにすることは、毎日の事故処理計画(Incident Action Plan)に盛り込む事故対応の目標を定めることです。この事故対策統轄体制は、日々の事故対応の活動を指示し、それを記録として残します。

この目標とは通常次のようなものです。1)流出源からの流出を止める、2)油除去作業をしている人および一般市民の安全を確保する、3)汚染領域の拡大を防ぐ、4)油の洋上回収、5)地区緊急時計画の過程を通して明確になった最優先で保護すべき環境および経済的に重要な場所を守る。このように事故対応の初期の段階から野生生物への影響が考慮されています。

油流出によって危機に瀕する野生生物の生息地を明確化し、さらにその野生生物の救護とリハビリテーションを実際に行うのは事故対策統轄体制の対策課の野生生物対策グループです。その事故によって悪影響を受けうる環境的、経済的に重要な場所が正確に指定されていることを確認し、さらにそれぞれの場所にあった対策を計画するのが計画課です。この計画の作成は通常、地区緊急時計画を基に、実際の流出による各現場への影響を予測することから始まります。

次に海岸線油除去およびアセスメントチーム(Shoreline Cleanup and Assessment Team,SCAT)の活動が始まります。このチームには、OSPRおよび州、自治体、連邦の機関から派遣される訓練を受けた生物学者、そしてさらに事故原因者の代表を含む場合もあります。このチームが、実際の油の漂着がどれくらいあるのかを明確にし、事故対策統轄体制が行う全

 

 

 

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