日本財団 図書館


ほとんどを管理するという活動は、繁殖個体群を長期に渡って保護するという重要な役割を果たしています。

現状の営巣地の保護では、油汚染やその他の保護上の問題による海上での海鳥の致死被害を防ぐことは困難です。油流出事故の後に海鳥個体群が回復するのを妨げるような保護上の問題が過去にもありましたし、現在も多く存在しています。油流出の原因の多くは、人間の過失によるものであるため、これを完全に防ぐことはできません。しかし、カリフォルニアでの油流出の件数は1992年に1,284件あったものが1996年には643件になるといった具合に、OSPRが設置されて以来減少傾向にあります(Oil Spill Prevention and Response 1997)。頻繁な油流出事故を防ごうとする努力は、石油産業や政府機関によってなされています。しかし、油流出は現在も起こっていますし、海鳥個体群に影響を与えています。

 

米国西海岸における海鳥回復活動のための大規模な資金が、1980年代と90年代に発生した幾つかの油流出事故の賠償金から間もなく利用できるようになります。1997年12月までに野生生物の回復活動の資金となる幾つかの賠償金の支払いがありました。それぞれの支払額は2億2,800万円から13億9,200万円(1$120円で計算)の間でした (P.R.Kelly & P duVair未発表資料)。回復計画の策定が何年にも渡って続いており、また流出汚染海域内で著しい影響を受けた鳥種に対する回復、代替、同様の資源の確保といった幾つかのプロジェクトが実施されています。

 

1989年にアラスカで発生したエクソン・バルディーズ号油流出事故の後に、アラスカで行われた同じような海鳥回復活動には以下のようなものがあります。

1)マダラウミスズメの営巣地として老齢林を確保する

2)国立野生生物保護区の外にある複数の海鳥個体群の生息地を買い上げる

3)海鳥が営巣する島に誘引された捕食者を駆除する

4)海鳥の繁殖や採餌の生態の研究を継続する

5)一般市民や学生に対して海鳥に関する教育をする

 

現在米国西海岸で大規模な海鳥回復プロジェクトが実施されています。1986年のエーペックス・ヒューストン号油流出事故で支払われた約6億円の賠償金を用いて、1996年にウミガラスの回復プロジェクトが米国魚類野生生物局、カリフォルニア州魚類鳥獣保護局、NOAAによってカリフォルニア中部で開始されました。このプロジェクトは米国魚類野生生物局主導の下、ナショナルオーデュボン協会(National Audubon Society)、ハンボルト州立大学、米国地質調査局、ポイントレイズ鳥類研究所の協力を得て、10年間続けられる予定です。以前ウミガラスの営巣地だった場所にデコイやミラーボックス、録音した鳥の音声などを仕掛けてウミガラスを誘き寄せ、営巣地として復活させる、といったことも行われています。初期段階の結果はとても良好で、このプロジェクトの初年度である1996年から97年にかけては、デビルズ・スライド・ロックでウミガラスが繁殖を再開しています(M.W.Parker未発表)。しかし、大規模で自立的な個体群を形成するまでには、長い年月を要することが予想されています。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION