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1996年ケープ・モヒカン(Cape Mohican)油流出事故(乾ドック内の船からサンフランシスコ湾に油が漏出)の際には、海岸観察プログラムのボランティアがポイントレイズ鳥類研究所の協力を得て、鳥類海岸線調査を行い、また鳥を捕獲しリハビリテーションに回す作業の手助けや、油のサンプルの採取なども行いました。同時にOSPRは、訓練された生物学者による海上での海鳥調査を実施しました。さらにOSPRやその他の機関の職員による鳥類海岸線調査や鳥を捕獲しリハビリテーションに回す活動も実施されました。こうした調査により、絶滅危惧種であるカッショクペリカンと絶滅の恐れのあるシロチドリ(Charadrius alexandrinus)の数羽が、この流出事故の際に油で汚染されたことが判明しています。

 

1993年以来OSPR、ファラロン湾国立海洋保護区管理官、その他のグループは少なくとも3件の廃油ボールの事件を記録しています。これは風雨にさらされた油がタール状の塊となって、油に汚染された海鳥とともに海岸に打ち寄せるものです。こうした廃油ボールの発生源を特定することは困難なことが多いのですが、遥か沖合いを通過する船舶やタンカーが発生源として疑われています(Oil Spill Prevention and Response 1996)。このような場合に海岸で救護された汚染海鳥の数は、流出が海岸の近くで起きた場合と比べてずっと多くの個体が海上で死亡していることを示唆していると考えられています。

 

現在の油流出事故では、自然資源損害アセスメント(Natural Resource Damage Assessment,以下NRDA)と油に汚染された鳥のリハビリテーション活動は、事故処理統括体制の枠組みの中で、連邦、州政府の機関によってよくコーディネートされています。致死被害を受けた海鳥の総数のNRDAによる推定は、流出事故の最中に集められた広範囲なデータ、事故後に行われるモデル化の作業、海鳥個体群に影響を与える全ての要素を評価することによって現在は行われています。しかし、OSPRによる各油流出事故への対応は、流出の規模や油に汚染された鳥の個体数、海岸への近づきやすさ、民間のグループや他の政府機関による援助の有無、対応にかかる費用といった要素によって、事故ごとに異なった方法で行われてきました。全ての流出事故において、その事故による全死亡個体数の推定値を出すことと、最終報告書を発表することが必要です。油流出事故が発生する頻度が高く、また継続中の訴訟も幾つかありますので、こうした作業をすることが困難ではありますが必要なことです。

 

1990年以降は、米国西海岸における油流出事故による海鳥の致死被害はよく記録されています。大規模な流出事故はほとんど発生していないのですが、小規模な油の流出による影響がより明確になっています。今までこうした小規模な油の流出の多くは、1970年代のIBRRCによる一連のリハビリテーション活動や、1970年代から90年代までの幾つかの海岸で行われた油に汚染された鳥の観察で確認されたもの以外は、基本的には記録も対応もなされませんでした(Carter 1997,j74 Nurほか1997)。

 

近年の海鳥回復活動

 

以前は営巣地の保護というのは、様々な人間活動が営巣している海鳥に影響を与えるのを防ぐために行われました。米国西海岸の国立野生生物保護区や公園の中にいる海鳥個体群の

 

 

 

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