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の多い国家・州トラスティーから助言をもらう。こういった助言は、通常地区緊急時計画にある情報と一致する場合が多いが、計画書にない最新情報も考慮される。例としては、地区緊急時計画で砂浜あるいは湿地が鳥類にとって被害を受けやすい地域として指定されているような場合である。地区緊急時計画があれば、対応にあたる関係者は水上での油回収作業とオイルフェンスの設置をするにあたり他の地区よりその地区の優先度が高いことがわかる。しかしトラスティーが、その地方のバードウォッチングクラブからのアドバイスにより、現在はある種の鳥の繁殖期における重要な時期であるから、その状態に手を加えるべきではないといったような情報を入手したとする。そのような場合、トラスティーは合同事故対策統轄本部にそのアドバイスを通知し、合同事故対策統轄本部はその地域の海岸線浄化作業を遅らせ、その鳥にとって重要な期間が終わるまで他の地域において活動を行うといったようなことがありうるであろう。

 

油濁事故対策において、すぐに確保できる資源以外のものが必要となる場合がよくある。その場合は、FOSCは関係するトラスティーと当然相談しなければならないし、合同事故対策統轄本部は優先順位の決定や難しい選択をしなければならなくなる。実際の経験からいえば、合同事故対策統轄本部のメンバーは通常ひとつのチームとして皆の同意を得、対応をうまく進めている。しかしながら合同事故対策統轄本部内で同意が得られないような場合は、FOSCがその決定権を有することになる。

 

典型的な対応

野生生物保護を考慮することがいかに事故対応に影響を与えるかを見るには、典型的な油濁事故を通して考えてみると理解しやすいであろう。まず第一に油濁事故が起こる以前の平常時でさえ、野生生物保護は国家緊急時計画の中で優先的な順位が与えられている。野生生物の保護については、緊急時計画を作成するための準備段階から以下のような考慮をしなければならない。まず、トラスティーと野生生物保護に関心をもつ団体の代表が地区委員会に含まれていなければならない。また、多くのNGOメンバーが地区委員会会合に出席し、油流出によって影響を受ける可能性のある野生生物について委員会メンバーに教育を施す。これにより、地区委員会メンバーが異なった状況における最善策を思考し、それを地区緊急時計画に書き加えることができる。事故発生の報告がされると、FOSCはその規模と自然への影響の度合いを決定するために状況を調べる。たとえ事故の影響が非常に小さい場合でも、トラスティーに通知がなされなければならない。それによりトラスティーはより詳しく状況を調べることができ、必要であれば自然資源に与えた損害規模の推定を行う。仮に事故が米国の魚貝類、野生生物、他の自然資源、および、公・個人の海岸だけに限らず米国の一般市民の健康と福祉を脅かす可能性が十分あるというFOSCの決定がなされたのであれば、FOSCは油回収作業の実行または委託をし、地区緊急時計画を履行しなければならない。トラスティーは事故対策統轄体制の計画部署に属するが、油回収作業がおこなわれている間は適当と思われるNGOと連絡を保ち、日々の事故対策活動計画が作られるにあたって野生生物に対する対応が考慮されていることを確認することになる。またトラスティーは、事故およびその対策活動がどのような影響を野生生物に与えたかについての情報を収集し、その如何によっては日々の対策計画を調整する場合もある。最終段階として、FOSCにいつ回収作業の終息宣言をし対策活動を終えるべきかをアドバイスする。

 

 

 

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