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地区緊急時計画の作成においては、様々な異なる分野の人々が関与するが、各分野で利害が対立する場合も多い。そのような利害の対立する多くの人々が一堂に会し、協力して一つの計画書を作成していくということは、時間がかかり、またうまく物事が進まなくなる場合も多々ある。確かに容易なことではないが、利害の対立する人々が相互に理解し、お互いの立場を知り、協力していくには、この地区緊急時計画の作成が最善の方法でもある。このような作業は、熟知する人々が被害をうける可能性のある資源の一覧を作成し、それをFOSCが入手できることになるという点で重要不可欠である。NGOが持つ特別な知識と技術なくしては、FOSCは事故対応時に直面する様々な問題を解決することはできないし、またそれは対応準備が完了していることにもならない。事故で混乱する中、そこで初めて様々な問題に直面し、それらをすべて解決・成功させようすることはほとんど不可能に近いのである。地区緊急時計画の作成は容易ではない。実際、後回しにしたりやめたくなる誘惑にかられるが、確かなのは、こういったあらゆる問題は仮に緊急時計画がなくても遅かれ早かれ取り組まなければならないことであり、唯一の疑問点はそれがいつになるかと言う点だけである。このような難題を解決する時期は、事故発生時の混乱のさなかやマスコミからの批判を浴びる事故後よりも、FOSCがあらまし状況を管理できる平常時の方がずっと望ましいのは明白である。

 

連邦現場統轄指揮官(FOSC)

OPA90により、FOSCには「連邦・州・民間のあらゆる油回収活動を管理しモニターする」ための幅広い権限が与えられた。また、FOSCは油流出補償信託基金から成る緊急資金を即座に手配する権限も有する。これにより遅滞なく油回収作業を行うことができる。「重大事故」が発生した場合は、契約締結や人材の雇用の際に決められている手順をふまずに必要な資金の手配を行うことができる。通常、その地区の港湾担当沿岸警備隊司令官がFOSCの任務につく。以上のことからわかるように、FOSCには非常に強力な権限が与えられているのである。そして、FOSCは迅速な決断をするための権限や資源、資金を有している。このような力を持つFOSCであるが、OPA90にはまた、FOSCが自然資源の専門家のアドバイスを受け、賢明な行動をとるべきであるという旨も明言されている。

 

油濁事故でも特に大規模な事故の場合は、事故対策統轄体制(Incident Command System)を使うと事故対策管理を最もよく組織化できることが判明した。基本的な形としては、 事故対策統轄体制には、計画、実行、現場サポート(輸送・宿営・糧食など)、および財政の4部門を担当するセクションチーフのまとめ役としてFOSCが存在する。FOSCと各担当チーフは、海上、海浜、海岸、河川、および、構造物といったものに対する全対策活動を把握している。これは、重要不可欠なことである。なぜなら、油漂着時に組織間の断絶を防ぐことができるからである。 つまり、すべての対策に責を負うFOSCの存在により、水上での作業と陸上での作業とが食い違いをおこすような事態が避けられる。担当チーフの下では、さらに地理上や機能上といったグループに分ける場合もある。また、これは国家緊急時計画に反映されていることであるが、大事故の対応はFOSCの指揮部が実際以下の3人であるときが最もうまくいくということが判明した。FOSCと州のOSC(事故現場を担当する州の代表)、そして事故の責任を負う団体である。この3人を称して合同事故対策統轄本部(Unified Command)と呼び、重要事項の決定、資源管理、また対応活動の調整や対応方針の決定を行う。野生生物については、合同事故対策統轄本部の3人のメンバーは、NGOからのアドバイスを受けること

 

 

 

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