今回の国際シンポジウムにおいては、OPA90と国家緊急時計画の4つの大きなポイントを強調したい。まず第一に国家緊急時計画では、特に環境に与える影響を最小限にとどめることに焦点をあて、広義の国家的優先順位を定めていること。第二にトラスティーを任命すること。第三にトラスティーやNGO、その他の団体が緊急時計画の作成に参加することが義務づけられていること。そして第四はFOSCに幅広い権限が与えられたとともに、トラスティーとの協議が義務づけられ、事故対策を指揮するための十分な財源も与えられたことである。
国家的優先順位
国家緊急時計画では、油流出事故対策において三大原則が定められている。まず第一に「いかなる対策活動においてもまず最優先されるものは人間の安全でなければならない」ということである。これは当然のことと思われるかもしれないが、往々にしてこの原則からはずれ、自分たちの安全を第一に考えないような場合が起こりうる。第二に「事故の状況がそれ以上悪化することがないよう適切な処理を行う」。これには油流出箇所の保全や残留油の回収、必要であれば事故船舶の破壊なども含まれる。第三に「環境に与える影響を最小限にとどめるための効果的かつタイムリーな対応を行うには、あらゆる必要な抑止手段・除去方法を調整・駆使しなければならない」ということである。この第三の原則では、計画・対応をしていく上で野生生物についても考慮しなければならないとされている。
自然資源トラスティー(受託者)
国家緊急時計画には、「自然資源トラスティーとして一般大衆に代わりその任務を果たす責任者」が明記されている。この場合、「自然資源とは、大地、魚貝類、野生生物、生物圏や大気、水資源、地下水、飲料水やその他の資源を意味する。」国家緊急時計画にはトラスティーの責務がかなり詳細に記載されている。トラスティーは、事故対策準備について、「とられるべき行動についてのタイムリーなアドバイスを提供」し、「地区緊急時計画(Area Contingency Plan)において、海岸線の種類や地域の事前指定、対応技術の事前承認をする際にFOSCをサポートしなければならない」。事故発生時には通常、トラスティーは事故対策統轄本部(Incident Command)と呼ばれる対策本部の計画部署に属することになる。これにより、毎日の事故対策活動計画において野生生物保護にも焦点があてられることとなる。
地区緊急時計画
OPA90により地区委員会が設立され、それぞれの地区委員会はその地域を担当するFOSCの監督の下、地区緊急時計画を作成しなければならない。さらに同委員会は「緊急時計画が効果的に履行されるよう連邦政府およびその地区の担当者と協力し、共同対応方法を事前に計画しなければならない。これには物理的な回収や油処理剤の使用、海岸線の浄化、被害をうけやすい地域の保護、魚貝類.野生生物の保護、救助、救護活動における適切な方法などが含まれる」。また地区委員会を援助するため、「産業界や大学組織、その他様々な組織が対策活動のための情報などを提供するよう積極的に奨励している」。このような組織から提供された情報や資源は地区緊急時計画に記載されなければならず、これらは「一般的な方法を適用しても効果が認められないような場合に、FOSCのサポートとなる」。加えて地区緊急時計画には、ボランテイア人材をいかに組織し、いかに有効に、また安全に活用するかという手順も記載されている。