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を考慮して推定を行った。

ただし、推定のための条件としては、

・海岸での漂着の調査は、どこでも1日1回行った

・海岸での漂着したものの消失率、漂着までの水没率については、米国での推定の際に用いられた数値を用いた

漂着数の多かったウミスズメとウトウについて被害規模の推定を行い、ウミスズメについては、漂着数456羽に対し、推定被害数1,000〜1,200羽、ウトウについては、漂着数496羽に対し、推定被害数2,800〜3,500羽という数値が求められた。

ウミスズメとウトウの差は、漂着場所と油の流出位置との距離の大小により、大きく推定値の差が生じていると考えられる。

 

6.海上で油と遭遇した位置を推定するために、油の流出過程を海流と海上風から再現し、ウミスズメ、ウトウが油と遭遇した可能性の高い位置を図に示した(図5および6)。

流出した油と鳥がどの場所でも同じ確率で遭遇したという前提で推定し、図化を行っている。この図からウミスズメとウトウが油に遭遇した可能性の高い位置はある程度推定できる。図上の○が大きいほど、また○の密度が密である場所ほど鳥と油が遭遇した可能性が高い場所であることを示している。

この図では、ウミスズメが、石川県沿岸で多くの個体が油と遭遇し、さほどの日時を経ずに漂着したと想定され、海上での消失がさほど多くなかったと考えられ、漂着した数の2〜3倍程度の推定被害数が算出された

これに対し、ウトウは、島根沖から新潟沖まで広い海域で油と遭遇した可能性があり、油と遭遇した後に海上での漂流時間が長かったと考えら、海上での消失個体がより多かったと推定されることからウミスズメと比較して推定被害数が多く算出されている。ウトウの場合漂着数の6〜7倍の推定被害数となっている。

 

今後の油汚染事故の際の被害調査について

 

今回の事故での被害調査は、日本での油汚染事故で鳥類の被害に関して体系的に情報、標本の収集が行えた初めてのケースであると考えられる。

被害調査のために必要な漂着したものの発見・収容活動は、都道府県が中心となって行うこととはなるが、今回の事故に際しては、NGO、ボランティアに負うところが大きく、重要であった。

 

今回の被害規模推定調査を実施するに際しての問題点としては、漂着個体の保護収容のための調査が体系的、網羅的に為されなかったため、海岸での調査の間隔をどこも一様に1日間隔と仮定し、調査にかける労力をどこも同じであったと仮定し、推定計算の単位を市町村単位としたことなど、実際のデータが得られなかった部分について仮定値で推定せざるを得なかった。結果として被害規模の推定値の信頼性に問題が残った。

 

このため、被害規模推定調査に必要な情報の整理、調査手法の整理が必要である。特に油汚染により被害を受けた鳥が収容される可能性のある地域では、海岸線での定期的なセンサ

 

 

 

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