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講演

ナホトカ号事故時の油汚染被害調査の実際と今後の課題

環境庁自然保護局野生生物課鳥獣保護業務室専門官

水谷 知生

 

は じ め に

ナホトカ号による油汚染事故では、これまで日本で行われていなかったこととして、

1)大規模な被害鳥の救護活動が行われたという点と、2)事故による海鳥への影響調査を実施する取り組みが進められたという点で、新しい展開があった。

この2点のうち、影響調査について、全く初めての取り組みでもあり、その概要と今後の課題を述べたい。

 

影響調査の呼びかけ

 

事故当初から、影響調査の必要性が(財)日本野鳥の会を事務局とする油汚染海鳥被害委員会(OBIC)により提言され、死体で打ち上げられたものの収集、分析を中心として影響調査が必要であることが認識され、活動が開始された。

OBICは、1)海鳥の被害の実状を記録し、2)被害の規模を推定し、3)被害から海鳥を守り、回復させるための方策を検討する、という目的で、関係団体、個人の研究者の連絡組織として発足した。OBICの役割としては、上記の目的を果たすために、参加している団体の活動による海岸センサスの体制作り、海岸での体系的な保護収容の実施、発見した鳥類の記録といった活動がなされた。

また、早期に米国の被害調査に関する専門家を招聘し、調査手法についてのアドバイスを受けることも行われ、日本で経験のなかった調査の手法についての情報収集も積極的に行われた。

 

調査の概要

 

今回の事故では、影響が広域にわたって生じ関係する府県が多かったこと、調査手法が確立されていなかったことから、環境庁として海鳥類への影響調査を実施することとした。

その背景には、OBICの鳥類の影響調査の必要性と活動の実施の呼びかけ、被害鳥の収容についての関係団体の活動があった。

影響調査の目的としては、

1. 被害にあった海鳥類がその種あるいは個体群にとってどれほどのダメージがあったのかを明らかにし、その回復措置の必要性に関する検討を行うこと

2. 被害鳥の救護のための技術/体制を整備すること

 

 

 

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