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全体を通じてみた主な病変はうっ血肝と腎臓腫大、心外膜炎、肺水腫などであった。このうち、肺水腫についてはウミスズメの項で触れた通りである。アビ類は比較的保護されてからの飼育期間が長いものが多く、長期飼育下での感染性の慢性病変と思われるものもしばしば認められた。しかし、飼育期間の長さと病変発現の関係に明瞭な関係をみることはできなかった。とくに飼育期間が60日間を越えるものも4例みられたが、これらにみられた病変と、数日間の飼育日数の個体にみられた病変との間に、明らかな差は認め難かった。

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アビ類の消化管内には黒色物が存在している例が比較的多く認められた。消化管のいずれかの部位で黒色物が認められた個体は、驚くべきことにアビ類全体の53.3%に及んだ。こうした多くは胃から腸内に認められた。アビ類の多くは数日間の飼育期間であったが、1例は60日間にもなる飼育にも拘らず消化管内には黒色物が認められた。この事実は、今後の治療に際して参考にすべきであろう。

 

最後にカイツブリ類について臨床との関連を考察する。

検査対象となったカイツブリ類は総数15羽であった。そのうちアカエリカイツブリが14羽とほとんどを占め、残る1羽がミミカイツブリであった。アカエリカイツブリは保護地経由とウトナイ経由が同数(7例ずつ)であった。

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カイツブリ類の主な病変は骨髄の貧血性変化がほぼ半数の個体に認められたのを始めとして、肺水腫(5羽、33.3%)、脾臓の萎縮性変化(7羽、46.7%)などが中心であった。肺水腫についてはウミスズメの項で触れた通りである。細菌性気管支肺炎は2羽、13.3%に認められただけであった。

カイツブリ類の飼育期間は比較的よく記録されており、保護地経由の個体の平均飼育期間は7.9日間である一方で、ウトナイ経由の個体では22.3日間であった。経由地による病変発現の差は大きかったが、飼育期間の長期化がその要因になっている可能性がうかがえた。

 

カイツブリ類の検査数が15羽と少なかったこともあり、厳密な検討は慎重になされるべきであるが、あえて経由地別の消化管内の黒色物の存在率を比較してみると、そこに明らかな差が認められた。すなわち、リハビリテーション・放鳥施設であるウトナイ経由の個体には1例も消化管内に黒色物はみられなかったのに対して、保護地からの直接経由の個体では8例中3例(37.5%)に消化管内黒色物が認められた。

 

 

 

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