d.定期的な調査の実施
1〜2月には毎週末に延べ7回の調査が行われ、延べ125人の調査者が参加した。調査は第1回は京都府下全域に渡って行い、2回め以降は調査区域を丹後半島にしぼって行った。実際に調査が実施された海岸は砂浜部分の延長14kmで、全海岸線(約50km)の34%であった。(國近誠 私信)
なお、この調査はその後、事故終息後のモニターを行うため、月1回の頻度で継続されている。
e.死体回収経路の整備
鳥類海岸線調査において回収された死体は、一連番号を付して京都府に持ち込まれ、分析のために冷凍保管された。発見・回収された鳥類は最終的には53羽となり、これは最終的な回収羽数(104;生体回収含む)の51%に上った(表3)。しかし調査は、調査者の殆どが京都市を中心とした内陸部に在住していたため、週末を利用して行われたので、平日に行われた油回収のボランティア作業や府・市町村職員等による巡回による回収はこれに含まれていない。死体がこうした人々に発見された場合でも、廃棄されないように、京都府から回収協力の依頼が出された。また、調査者らにより、現地海岸近くに「死体回収ポスト」がおかれ、回収する試みも行われた。
(2)調査における問題点
OBICは地域グループに対して組織的な鳥類海岸線調査の呼びかけを行ったが、調査員の派遣を行うことはできず、実施は地域グループに任された。調査を実行し得たかどうかは、住居地に密接しているか/離れているか、鳥類の保護回収の羽数が多く時期が短期に集中していたか/比較的少なく間も空いていたか、等の条件によって、差ができたと思われる。また、過去に油事故の経験のあった地域(島根県、京都府)では比較的迅速な対応がとられた。
より有効な被害推定を行うためには、事前の準備・計画が必要であるが、この中には広域的な支援体制の整備、行政によるパトロールや油回収作業との連携も含まれるべきである。また、被害を受けた鳥類の救護活動との連携は、人的に重なることも多いため、分担と連携が不可欠と考えられる。
また福井県では、陸から近づけない海岸や多くの島嶼を調査するため、船舶による調査の必要性が指摘されている。このような調査困難地域における調査は、専門の研究者や学生等の派遣・サポートが必要と思われる。
(3)地域NGOにおける鳥類海岸線調査対応の可能性
日本野鳥の会の支部は全国に86あり、滋賀県を除いて全都道府県をカバーしている。
各支部とも探鳥会活動を中心に活動が行われており、かならずしも鳥類、特に海鳥の調査を実施しているわけではないが、その地城の鳥類の識別に関しては一とおりの技術を備えている。油事故の際にはこうした支部あるいは支部会員が、ボランティアとして鳥類海岸線調査の一翼を担い、あるいは調査体制を組織することは今後も可能と考えられる。