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野生生物の救護と施設

1) 日本における油に汚染された野生生物の救護は、全ての動物が高いレベルの救護をどこの施設でも同じように受けられるように標準化されるべきでしょう。

 

2) その救護の手法は、油汚染生物救護ネットワーク、カリフォルニア大学デービス校野生生物ヘルスセンター、国際鳥類救護研究センターといった団体の既存の動物の救護手法を手本とし、また日本の全ての油に汚染された野生生物の救護施設で実施されるべきでしょう。

 

3) 油に汚染された野生生物の内の生存の確率が低い個体のために、安楽死の判断基準が設けられるべきでしょう。個体によっては安楽死が最も人道的な処置であることもしばしばあるので、安楽死についても救護の手順をきちんと明示すべきでしょう。剖検の手法も標準化されるべきですし、また剖検で得られた組織を用いて組織検査も行われるべきでしょう。これは日本における油に汚染された野生生物の救護プログラムの基本となるべき部分です。

 

4) 油に汚染された野生生物の救護施設には、救護に必要な装備が油流出事故が起きる前に十分に備えられるべきでしょう。必要な装備には以下の様なものがあります。十分な,鳥の収容ケージ(海鳥専用のケージは綿の網目底であること)、温度管理ができる部屋(18〜22℃)、洗浄に適した水質(硬度2〜3)、すすぎのための十分な水圧(40〜60PSI)、鳥の乾燥用施設、洗浄後の鳥を収容するための適切な大きさの回復プール。回復プールには、ウ類やカイツブリ類のような大型の鳥だけではなく小さな潜水型の海鳥も収容できるような十分な大きさと深さがなくてはなりません。プールまたは回復プールは、その周辺に陸に上がることもある鳥ための上陸スペースを必要に応じて追加できる様な構造にするべきでしょう。

 

5) 油に汚染された野生生物の救護施設には、救護に必要な医療品が十分に備えられている必要があります。必要な備品は以下の様なものです:保護鳥のカルテ、油に汚染された鳥の治療手順書(治療プロトコール)、脱水改善剤(例:Pedialyte/商標)、活性炭(例:Toxiban/商標)、注射器(1mlと3ml)、チューブを用いた強制給餌用の器具(赤いゴム製の尿道カテーテル、給餌用のチューブと注射器(30mlと60ml)[訳注:胃カテーテルやディスポーザブルの浣腸器(20〜30、50〜60mlでも可)]、皮下注射針(25〜22G)、ミクロヘマトクリット管とパテ、ミクロヘマトクリット管用の遠心分離機、PCV(総血球量)リーデイングスケール、TP(血清総タンパク)を測定するための光学屈折計、血糖値の計測機器(糖尿病患者用の機器、生化学検査機器またはChemstik/商標)、ブドウ糖液、乳酸化リンゲル液または生理食塩水[訳注:いずれも注射用」、鳥種ごとに適した食餌(海鳥、水鳥やスズメ目の鳥)、抗菌剤および抗真菌剤。また、ここで紹介した備品とその供給業者を日本国内で事前に探しておくとよいでしょう。

 

6) 油に汚染された野生生物の救護施設は、鳥の収容、洗浄、すすぎ、調理室、治療室、剖検室、ボランティアの部屋、洗浄後の回復プールなどのために十分に広いものであるべきでしょう。

 

 

 

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