5) 脱水改善(水和)と給餌の手法を改善し、リハビリテーションされた個体の全般的な体調を改善すること
6) 健康状態のバロメーターとして体重の変化を監視すること
7) 洗浄技術を改善すること
8) 放鳥前の鳥の状態を評価するために血液サンプルを採取、分析すること
リハビリテーション施設でのこうした改善の数々は、相乗効果を発揮し鳥の救護の質を著しく向上させました。これらの改善は日本の人達、特にボランティア、野生生物のリハビリテーション担当者、野生生物の救護をした獣医師らの前向きな姿勢と献身的な努力によるものです。また日本政府、道府県、民間機関、非営利組織、専門家グループによって、個人の努力をより統合するような格別な努力がなされましたが、残念なことに、適切な施設がなく、準備、訓練もされていなかったために望ましい結果は出ませんでした。
結局、ナホトカ号の油流出事故で生体として回収された鳥のうち、リハビリテーション後放鳥までできた個体はわずか21%でした。放鳥された鳥の多くは、カリフォルニアでの放鳥後の典型的な生存期間や、その他の場所での油流出事故における放鳥後の生存期間と比べて短い期間しか生存できなかったであろうと思われます。ナホトカ号の油流出事故対応における低い放鳥率は、20年前のカリフォルニアの事故対応のものと似ています。カリフォルニアではより多くの経験、より良い計画と組織、野生生物の救護をする人に対するより高度な訓練、医学的な手順の改善、油に汚染された野生生物の救護施設の建設といった改善努力の結果、現在の平均的な放鳥率は50〜75%にまで上がりました。油流出事故に効果的に対応できた時は、放鳥率が90%にまで達することもあります。油に汚染された野生生物の救護が全て成功しているとは言えないまでも、昔のリハビリテーションの実績と比べて多くの種で放鳥率が上がっており、放鳥後の生存期間も概して長くなっています。
将来の油流出事故に備えて
油に汚染された野生生物の救護施設
ナホトカ号の油流出事故の際の油に汚染された野生生物のリハビリテーションに関する問題の多くは、油に汚染された野生生物の救護に必要な準備がされていなかった事や適切な施設が無かった事に起因しています。過去20年間に渡ってカリフォルニアで経験されてきた様に、またナホトカ号油流出事故が日本で示したように、油に汚染された野生生物を救護することを想定していない建物を、数百羽の汚染鳥に適切な救護が施せる医学的救護施設の代替施設として利用するのは非常に困難です。今回は油に汚染された野生生物の一時的な救護施設を4ヵ所準備するのが精一杯でした。しかし、こうした施設には、十分な救護を施すために必要な専門的な装備はありませんでした。
油に汚染された野生生物に達成可能な最高の救護を施すためには、適切な施設が油流出事故対応が始まる前に準備されなくてはなりません。しかし、ナホトカ号事故の際に使われた4ヵ所の主なリハビリテーション施設は、油流出事故が発生した後に既存の施設を改造したものでした。さらにこれらの改造施設は、もともと油に汚染された野生生物の救護施設として利用されることを想定して建設されてはいませんでしたので、油に汚染された野生生物に質の高い救護を施すために必要で適切な収容能力と装備を持てる様な構造にはなっていませんでした。さらに、これらの既存の施設は一時的に改造されたに過ぎず、また油に汚染された