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油流出事故時の野生生物救護の諸問題について

 

カリフォルニアで行われている油に汚染された野生生物の先端的な救護は、以下の様に幾つかの段階に分けられます。

1) 受け入れと安定化

2) 医学的な治療

3) 洗浄が可能か否かの評価

4)洗浄と乾燥

5) 洗浄後のリハビリテーション

6) 放鳥が可能か否かの評価

7) 放鳥

8) 放鳥後の追跡調査

ナホトカ号事故の場合、初期の頃の救護活動は、上記のほぼ全ての段階において最適なものとは言えませんでした。実際、通常行うべき救護なのに実施されていないものが幾つもありました。原因としては、今回の事故における野生生物の救護の不備は、単に油に汚染された野生生物を救護した経験がなかったことや、油に汚染された野生生物の救護施設として不適当なものを使っていたことが考えられます。

そしてこうした経験不足や施設の問題はナホトカ号事故の対応の間にも多少改善され、それによって鳥の救護のレベルはある程度向上しましたが、残念ながらその救護は、カリフォルニアで行われている救護のレベルに及ぶ様なものではありませんでした。しかしこの状態を否定的にとらえるのではなく、将来の油流出事故対応の際に日本で施される救護の質を著しく向上させるよい機会だととらえるべきでしょう。

ナホトカ号事故における油に汚染された野生生物の救護活動の中で、初期的に現われた多くの問題は、油流出事故に対する備えがなかったこと、救護ですべき事が体系的にまとめられていなかったこと、そして油に汚染された鳥を治療した経験がなかったことによるものでした。こうした問題の多くは、カリフォルニアから招聘された経験者(カリフォルニア大学デービス校のニューマンと国際鳥類救護研究センター(International Bird Rescue ResearchCenter,IBRRC)のDierdre GoodfriendさんとCurt Clumpnerさん)による講義や実演、そして油に汚染された野生生物の救護を実際に行うことで改善が計られました。

さらに、油に汚染された野生生物の救護の手順が、油汚染野生生物救護ネットワーク、カリフォルニア大学デービス校野生生物ヘルスセンター(CA,95616 USA)、国際鳥類救護研究センター(699 Potter Street,Berkeley,CA,94710 USA)からある程度取り入れられました。この内容は日本語に翻訳され、石川市民レスポンスのホームページから参照(http://www.incl.or.jp/~akamine/)することができます。

ナホトカ号油流出事故の際は、油に汚染された野生生物に関わった人のほとんどが未経験者でしたが、時間とともに野生生物の救護の方法は以下の点で大きく改善されていきました。

1) 鳥舎の温度を上げること

2) ケージを網目底にする(網を張る)こと

3) 段ボール製の保護箱に入れられる鳥の数を減らすこと

4) 鳥にバンディング(個体識別標識の装着)をし、個体ごとのカルテを作成することで、個々の個体のリハビリテーションの過程を追跡できるようにすること

 

 

 

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