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古南幸弘副所長と水谷知生専門官は、油流出事故が野生生物やその生息地に及ぼした影響を評価する試みについて説明しています。古南さんは、油汚染海鳥被害委員会(OBIC)や地方の団体が行った、油に汚染された鳥の死体の海岸での調査活動を紹介しています。人員が不足していたり、海岸線の多くは人間が接近できないような海岸だったりしたために、全域に渡る一貫した調査ができなかったと述べています。場所によって調査を開始した時期も異なっていました。こういった調査活動が事前に計画されたものではなかったことが、多くの問題の原因だったと指摘し、将来の流出事故に備えて事前に計画を立てておくことの必要性を訴えています。調査活動に必要な物資を手に入れておくこと、要員の教育訓練、効果的なコミュニケーション、広域に渡る活動のコーディネートを可能にするシステムを設立することも必要だと述べています。

水谷知生さんは、流出事故が野生生物やその生息地に及ぼした影響を、環境庁がどのように評価しようとしたかを説明し、この進行中のプロジェクトの結果を一部紹介しています。この試みにはNGOの協力と専門知識が不可欠でした。最後に水谷さんも事前の計画の必要性を訴え、特に被害の評価方法を改善することと、鳥の生体と死体を回収することの大切さについて一般市民に教育することが必要だと述べています。

 

アメリカ合衆国における油流出事故の準備と対応のモデル

ジョセフ・ブルソウ司令官は、1990年油汚染対策法(Oil Pollution Act of 1990)に定められているアメリカ連邦政府の油流出事故に対する準備および対応の方針を紹介しています。そのなかで、アメリカのこの成功しているモデルの重要な要素として次の様な内容をあげています。それは、事前の計画、野生生物やその他の自然資源を守るための政府からの指令、計画段階でのNGOの深い関与、一人の連邦政府の代表者(Federa 0n一Scene Cordinator)に幅広い権限を与えること、野生生物保護機関と相談することの義務付けなどです。

ハリー・カーター専門官のアメリカ西海岸における海鳥の死亡率推定の試みの歴史についての講演では、調査に関わる団体や調査の精密さが流出事故ごとに異なってきいるということが述べられています。過去における死亡率の推定結果が総じて低かったのは、記録が不十分だったことに起因する可能性があるとも述べています。さらに、油汚染による影響の恐れが、どの様にしてその場限りの流出事故対応だけではない幅の広い保護活動を生んだかについて紹介しています。

ピート・ボンタデリ室長は、油流出事故の対応および被害を受けた自然資源の回復に対するカリフォルニア州でのアプローチを説明しています。カリフォルニア州油流出防止対策室が事故対応の中心機関であるとともに、事故時に州の自然資源を保護する官庁の一部でもあることから、「油流出事故の対応の全ての段階において野生生物が十分かつ一貫して取り扱われることが保証できるのです」と彼は強調しています。

ジョナ・マゼット博士とポール・ケリー専門官は、自然資源に対する影響を最小限に抑えるためにカリフォルニア州が用いている必要な多くの要素と対策手段について説明し、ボンタデリさんの講演内容を補足しています。マゼットさんは、カリフォルニア油汚染生物放護ネットワークについて説明し、こうしたネットワークが効果的に機能するために必要な資源と準備活動を明らかにしています。ケリーさんはベースラインデータの大切さとその利用について説明し、さらに

 

 

 

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