「ナホトカ号油汚染鳥類の救護・保全活動から何を学ぶか?」
(社)日本動物園水族館協会
会長 池田 隆政
日本近海をはじめとする海洋での油汚染は、いつ起こっても不思議はない状況です。ナホトカ号の事故のあとにも、東京湾での油流出事故などが発生しています。
日本海の重油流出事故では、多くの人の協力で鳥類の救護活動が行われました。今後に予想される大きな事故の場合には、多くの分野の団体や個人の結集が必要になります。起こってはならない事故ですが、野生動物への被害が発生した場合、日常的に野生動物を扱っている動物園水族館の獣医師や、飼育技師は、診療、保定、強制給餌、リハビリなどの分野での協力ができると考えています。
このシンポジウムでは、ナホトカ号の事故から学んだことを生かし、鳥類の救護を効果的に行うための方策が模索され、油に汚染された鳥類が1羽でも多く救われるために、我々は何をしたらいいのかが見つかることを期待しています。そのために、野生動物を扱っている動物園水族館の技術が必要であれば喜んで協力することを申し上げ、このシンポジウムの成功をお祈りいたします。
野生動物に関する公開シンポジウム開催によせて
(財)鳥取県動物臨床医学研究所
理事長 山根 義久
日米の野生動物に関わる専門家の人達が一同に集まり、「ナホトカ号油汚染鳥類の救護活動」を中心として環境保全における危機管理の将来像について国際会議を開催されますことは誠に意義のあることであり、かつ時宜を得た催しかと存じます。
環境問題といいますのは、昔と異なり現在では自国のみで決して解決がつくものではありません。インドネシアの山火事が、世界的な規模で地球環境に影響を与えているように、地球温暖化も含め環境問題は、世界各国が共通の土俵で対策を講じなければならない時代がきたといえます。日本は環境汚染の先進国でもあります。過去の失敗を繰り返さないためにも国民一人一人が環境問題に意識を持つ必要があります。今回のナホトカ号の油汚染では、財団法人鳥取県動物臨床医学研究所も事故発生現場に近いということで、野生動物担当研究員が対応して参りました。実際、事に当たってみますと初の経験でもあり、大変な努力と忍耐が必要であることが判りました。しかし、野生鳥獣の住めない環境には人間も住めなくなるということを肝に銘じて、今後とも努力を惜しまない所存であります。今回のシンポジウムが実りある会となりますことを祈念致します。