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シンポジウム開催によせて

(財)日本野鳥の会保護・調査センター

所長 品田 穣

 

ナホトカ号油事故は、図らずもふだんあまり注目されて来なかった海鳥たちの存在を浮き彫りにすることになりました。海鳥の生態には未知の部分が多く、日本近海で越冬する個体群の分布と数、日常的に起きている小さな事故による死亡の状況、繁殖地における人からのインパクト等、不明の部分はあまりにも多く、この事故の影響をどう評価し、どう回復の手だてを立てるかは大きな課題と言えます。たいへん不幸な事故ではありましたが、多くの団体・組織・個人が連携して対処することができたのは幸いでした。この事故の教訓を生かし、今後よりよい体制を模索するため、本日のシンポジウムに期待いたします。

 

油汚染対策のしくみの構築を!

財団法人 日本鳥類保護連盟

会長 鯨岡 兵輔

 

本年1月早々に発生した、ロシアのタンカー「ナホトカ号」の沈没事故により、日本海が広範囲に渡って重油汚染にさらされ、海洋環境ならびに多くの野生生物に甚大な影響・被害がもたらされました。これに対し、周辺の行政担当者をはじめ、地元住民、自然保護団体、ボランティア、そして海外から駆け付けていただいた専門家など、実に多くの方々のはかり知れない善意により、海鳥の救出や死体回収の作業が進められ、その結果、最悪の条件ながら多大な成果を挙げられたことに、何より称賛の意を表わしたいと思います。しかし一方で、全体を通じてその対応をめぐり、組織体制の未熟さや個々の連携に関する問題点が、さまざまな形で浮き彫りにされたのも事実でした。

四方を海に囲まれた島国である日本は、常にこのような汚染事故にさらされる可能性を持っています。従って、早急に全国的な油汚染事故への対応体制を整備していくことが必要なわけです。

この度のシンポジウムが、今後の油汚染対策のしくみの構築に向けた礎になることを、心より願っております。

 

 

 

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