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シンポジウム開催によせて

社団法人 日本獣医師会

会長 杉山 文男

 

本年、年明け早々、島根県沖で発生したロシア船籍ナホトカ号の油流出事故は、日本海沿岸漁業関係被害や環境破壊ばかりでなく、多くの水鳥にまで油汚染の被害が広がり、規模、被害ともこれまで類を見ないほどの油汚染流出事故に発展いたしました。

事故発生直後から、被害の見られた地域では関係地方獣医師会並びに動物自然保護団体等ではそれぞれの県自然保護課及び環境庁自然保護局とともに水鳥の保護・救護活動にあたるなどそれぞれが緊密に連絡をとりながら対応する一方で、野生動物救護獣医師協会では直ちに関係者を被害地域へ派遣して、積極的に救護活動を展開するなどして、水鳥達の尊い多くの命が救助されました。

ご記憶の方も多いと思いますが、平成5年1月に突如として発生いたしました阪神大震災におきましては人や家屋の被害ばかりではなく、犬、猫等多くのコンパニオンアニマルも被災し、その救助にもわれわれ獣医師による積極的な救助活動が行われました。

こうした幾つかの経験を踏まえて、日頃から不慮の災害に備えて、野生動物等の救護活動の対策を講じておくことは、われわれ獣医師が獣医療を提供していくうえで大切なことであり、今回、開催されます日米専門家会議は時宜を得たものとしてその成果を期待しているところです。

最後になりましたが、この度の専門家会議開催にあたり、開催までの関係各位の多くのご苦労とご尽力に対し深く敬意を表するとともに、本会議のご成功を衷心よりお祈り申し上げます。

 

環境調和の指標として野生動物保護を考える

日本野生動物医学会会長

高橋 貢

 

野生動物は、その環境に適合して生存じているが、人口の増加や土地の開発あるいは産業廃棄物や家庭雑廃によって、身近な自然が野生動物にとっては適合しにくい環境に変化し、次第にその数が減少する傾向にある。また、二酸化炭素による地球温暖化や公海の原油汚染あるいはエルニーニョ現象なども、地球規模で著しい環境の変化をきたしている。

国連の調査によると、現状のままで地球規模の開発が進めば、2020年ごろまでには、1日に50〜150種の生物が地球上から姿を消してゆくであろうと予測している。

人類を育んでくれた地球環境は、経済文明によって、ダイオキシン、オゾン層破壊、二酸化炭素あるいは人口増加などの弊害をもたらし、いま地球環境は大きな岐路に立たされている。いまこそ20世紀の経済文明社会から、21世紀には環境調和型の文明社会に転換すべき時期であり、野生動物の生態系を科学的に究明することが、環境調和の最も重要な指標となるであろう。

 

 

 

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