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れに対し、AY73は最大で+40%以上の変化を示しており、明らかに色相の変化が生じていた。AY73はサーモクロミズム(温度によるスペクトルの変化)を示し、かつ塩基性溶液中でより発色する性質がある。そのため、冬期には吸光度が小さく夏期には大きくなり、また、貯蔵はガラス容器(ソーダガラス)で行ったため、保存期間が長くなると若干塩基性の状態になり、色が濃い方向へ変化したものと推定される。

液体は温度変化により膨張、収縮をする(密度が変化する)ので、吸光度は密度の影響を受ける。従って実際は、密度の影響を含めて評価する必要があるが、実質的な吸光度の変化を調べるため温度変化を補正して比較した。表5一4に25℃での密度補正をした場合の結果を示した。補正は以下の式を用いた。

 

025-1.gif

 

表より、密度補正を行うと変化率は小さくなることがわかる。これは、25℃での補正のため、主に冬期間における吸光度が小さくなる方向になったためと考えられる。AB9、AB90、AR52、SB5の変化率は最大でも+4.6%であった。AY73は-21.7%から+43.8%まで変化した。従って、AY73を除き、吸光度の変化はほとんど問題ないと判断できる。

(4)自然貯蔵試験期間中の吸光波長の変化

表5-5には、貯蔵期間中の吸光波長の変化を示した。AB 9の吸収スペクトルは、625.8〜626.6nmの範囲内にあり安定している。同様に、AB90の吸収スペクトルの波長は607.2〜609.2nm、AR52は556.4〜557.2nmの範囲内にあり安定している。AY73は479.2〜483.2nmの範囲内にある。SB5は591.6〜595.4nmの範囲内で、ややバラツキがある。

着色剤が化学変化を起こした場合吸光波長が変化すると考えられるが、試験結果は、最大でも0.6%の変化であり着色剤自体の変化はないと判断できる。

(5)まとめ

5種類×6バリエーションの着色メタノールのサンプルを1年間自然貯蔵した結果、吸光波長の変化は、最大でも0.6%の変化であり着色剤自体の変化は見られなかった。吸光度の変化はAY73を除き、ほとんど問題なかった。

 

 

 

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