日本財団 図書館


本編

 

序章 調査の目的及び概要

 

我が国では、都市部を中心として窒素酸化物及び浮遊粒子状物質による大気汚染は深刻な状態であり、環境基準を達成できない地域があるなど、都市部での大気汚染対策は緊急かつ重要な問題となっている。窒素酸化物の発生源として大きな割合を占める自動車については、これを大幅に削減することのできる電気自動車、メタノール自動車、天然ガス自動車等の低公害・代替燃料自動車が実用化の段階にあるものの末だ大量普及には至っていない。

この低公害・代替燃料自動車の一つであるメタノール自動車の燃料、即ちメタノールは毒物及び劇物取締法上の劇物に該当し、これまでその販売等を行う者については毒物劇物販売業の登録を受けた上で、専任の毒物劇物取扱責任者を置く必要があった。これが、平成6年4月の同法施行規則の改正で、着色によりー般用メタノールと区別された内燃機関用メタノールのみを取り扱う毒物劇物販売業においては、それのみを扱う特定品目毒物劇物取扱責任者の資格を有する者を毒物劇物取扱責任者とすることができるようになった。このため、メタノール自動車の普及に関し、一般用メタノールと内燃機関用メタノールを区別するための、着色剤を検討することが必要になった。

この検討を進める上で、次の要件を満たす必要がある。即ち、

 

?@メタノール自動車の低公害性に悪影響を与えるものであってはならない。

?Aメタノール自動車のエンジンに悪影響を与えずかつ安全なものであること。

?B自動車燃料用メタノールの価格等への影響を最小とするもの。

 

この調査は、上記の条件を満たす内燃機関用ニートメタノール(M100)の着色方法を検討することにより、メタノール自動車の普及に資することを目的とする。

 

このような目的を踏まえこの調査は、早稲田大学理工学部 大型泰弘教授を委員長とする委員会を設け、その指導のもとに平成6年度から開始された。主な調査内容としては、まず、平成6、7年度に国内国外におけるメタノール燃料の着色に関する研究等の調査、着色剤資料の収集及び着色剤選定のための要求性能の検討、着色剤の第1次選定を行った。続いて、平成7,8年度に品質、安全性に関する試験として、自然貯蔵試験、燃料分析試験及び変異原性試験を実施した。また、それらの結果をもとに着色剤の第2次選定を行い、実証試験として着色剤がエンジンの排出ガスに与える影響を調査する試験を行った。最終年度である平成9年度は、実際の車両に着色したメタノール燃料を用いた実証走行試験を行い、燃料系、エンジン燃焼系等の部品に与える影響が無いことを確認した。また、同時に着色メタノール燃料を市場で使用するための供給システム及びコスト等の検討を行い、自動車用着色メタノール燃料の市場化に向けての、技術的、経済的検討について約3年間にわたる調査研究を総合的にまとめた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION