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クロティルデが戻って来て、グストルの突然の帰郷に驚くものの、ハンジを見て冷ややかに楽屋へ追いやり、お前をウィーンヘ転属させたのも、ハンジと結婚させるのではなく、グストルにお似合いのトウラウンシュタイン令嬢と結婚させるため、と言う。グストルは呆然。そさきれもそのはず、伯爵令嬢とはいえ、前の皇后の女官長で、今や還暦を迎える人。

ハンジが第二部のアトラクションが始まる、と言いに来れば、クロティルデは今度はグストルを体よく追いやり、ハンジにグストルとの仲を問いつめ、「あの子はトウラウンシュタイン伯爵令嬢と婚約が成立し、結婚することになった」と宣言し、去る。

怒るハンジ。なぜグストルはそれを隠していたのか、と体中が火と燃えた時、ヴイリーが「いよいよ僕たち出番です」と来る。ハンジは「私は出ないわよ。『春のパレード』は演奏だけにして。グストルにご婚約おめでとうと言って」と去る。

狐につままれたようなヴィリー。そこヘマリカが来る。軍のカジノに入れそうもないのに、と聞けば、「テレーゼ・ベーカリーのパンや菓子が慈善パーティで使われるので、フリッツに頼んでもぐりこませてもらったの。何よりあなたの『春のパレード』が聞きたくて」と。ヴィリーはハンジが歌わなくなったことを告げ、「でも考えてみると、あの『春のパレード』をワルツにしたが、どうもどっか違う、何かが欠けている」と言う。マリカは「そんな・こと ない・わよ」と否定する。その言い方がマーチのリズム。ヴイリーは、はたと気づき「そうだ『春のパレード』はマーチでなくちゃ!」と狂喜、「これから急きょ、変更してもらおう」と去る。

呆気にとられているマリカに、フリッツが来て、「恋と咳は隠せない。ぼくはあなたに首ったけ」と告げれば、一笑にふすマリカ。“パン屋のケルビーノ”はがっくりするものの、「友情だっていつかは愛に変るかも-」と望みを時に託す。ドイツ蹄土団軍楽隊がミッターマイヤー隊長を先頭に、今、出来上ったばかりのM18マーチ「春のパレード」を奏でながら行進して来る。熱狂する客たち。爽快なマーチのリズムにのって人々が踊り出す。クライマックスに達した時、クロティルデが出、演奏を中止させる。「こんな下品極まりないリズムの音楽なんて!」と怒り、クロティルデは「このマーチは永久に演奏禁止、もっとも皇帝のお許しでもあれば別」と宣言し、去る。絶望するヴィリー。マリカはヴィリーを慰める(M19「わたしってお馬鹿さん」)。ヴィリーが肩を落していると、クロティルデに用を頼まれて出かけていたグストルが戻って来て、ハンジの一件を聞き、絶望する。その時、ドイツ騎士団が隊伍を組んでやって来て団歌M20「あわれな兵士-われわれ若者・マーチ・アンサンブル」を高らかに歌い、落ち込んだ土気を盛り上げれば、招待客も戻り、共に陽気に華やかに歌い踊り-。一幕一

 

第二幕

 

M21「序奏」。「春のパレード」をテーマにシュトルツ・メロディが明るく軽快に流れ-

第一場 スヴォボタ理髪店

前幕の翌朝、5月12日、テレーゼ・ベーカリー真向かいにあるスヴォボダ理髪店では五人の娘たちが、けなげに父親を手伝っている。朝一番のお客はミッターマイヤー軍楽隊長、今夜デートだというので、スヴォボダは腕によりをかける。ところが突然、前の方の毛がキュンと立ったまま、ローラーを使おうが、百科事典で押しつぶそうが、蒸しタオルで蒸そうがびくともしない。慌てるスヴォボダ。そこヘノイヴイルト宮廷顧問官が来る。今夜のマダム・テレーゼとのデートのために髭を整えに来たのだ。「昨夜は眠れなかった」と言えば、私だって-と。嫉妬に燃えるスヴォボダ。だが商売となれば別。ノイヴイルト自慢の髭をていねいに整えていると、隣りの軍楽隊長が蒸されすぎて茹だり、気を失う。驚いたスヴォボダは子供たちに気つけ薬にアンモニアをかがせる。あまりに鼻に近付けすぎたので軍楽隊長は思わず大くしゃみ。息を吹き返してほっとしたのも束の間、焼きごてをノイヴィルトの髭にあてたまま、指図をしていたので、今度は髭が火事。消火器よろしくサイフォン・スプレーで火は消し止めたものの、ノイヴィルトご自慢の髭はカットするしかない。マダム・テレーゼが見たら、と今にも泣き出しそうなノイヴィルト、相変らず前髪が立ったままの怒髪天をつく軍楽隊長! 進退谷まるスヴォボダ、「おおカミよ!!」と天を仰ぐ。

第二場 クリンツインクのホイリゲ「フオイアヴエアの庭園」

ウィーンの森の麓、グリンツイングにあるホイリゲ(酒場)、フオイアヴェアの庭園。主人のアーダムが、往年の名画「会議は踊る」ではないが、M22「ホイリゲの歌・ウィーンとワイン」(ヨゼフ・シュトラウス/W.R.ハイマン曲)を歌えば、人々も和す。ノイヴィルトとテレーゼがやって来る。髭を気にするノイヴィルトにテレーゼが、「返って若くなって」と微笑む。勢いを得たノイヴィルトは「三年間、ベーカリーに通いつめたのは、皇帝のパンもさることながら、五十ま

 

 

 

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