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■ヒアリング先:松本 誠(神戸新聞社 情報科学研究所 研究調査部長)

記者時代、阪神・神戸間で公害・環境的まちづくりを中心に取材。地域環境と地域づくり、市民主体のまちづくりへの関心から現職に。市民団体「明石まちづくり研究所」代表。明石生まれ・明石育ち。

(1997年7月30日(水)AM10:00〜12:30 神戸新聞社 会議室にて)

 

【連携】

■海岸の利用とメンテナンス

●大阪湾の空洞化

・海岸地域の空洞化の問題(70年代〜)

90年代になっても解決されないまま、地域の大きな問題となっている。ただし、地域に波風が立つのは悪いことではない。議論と行動を通じて、関心が高まり、市民が参画する機会が増える。

・地域を分担して歩く調査を

70年代はじめ、瀬戸内海のPCB汚染で漁業が大被害を受け、漁業組合が工場に乱入するなどの騒ぎが起こった。その時に「瀬戸内海を守る住民、漁民の運動」と科学者の運動がドッキング。瀬戸内調査団が沿岸を歩いて調査した。(鷲尾氏も当時参加)

●埋め立て地の現状

・具体的なプランがない

大阪港のほぼ全域にわたり、埋め立ては進んでいるが空き地だらけ。

ex.尼崎:発電所跡地がそのままに。神戸製鋼:リサーチパーク、足踏み状態。鳴尾浜:空き地が残っている。

西宮浜:高層住宅に。昔は酒をテーマにした集密施設が計画されたが、バブル崩壊で暗礁にのりあげて困っている時に震災、計画が中断して救われた。

甲子園浜:埋め立て問題継続中(昭和40年代〜)。土地利用計画が変化、現在でも確定せず。ポートアイランド、六甲アイランドも似たり寄ったり。

●大蔵海岸の埋め立て事業

・明石海峡大橋に便乗したバブル時代の計画

橋開通でいきなり計画が浮上。丁度バブルの時代だった。「何のためにつくるのか」という問題は後回しのまま、バブル崩壊で環境が激変した中で強行した。

・バブル時代の甘い資金回収計画

埋め立て地の一部を売却して資金を回収し、費用は1銭も公費負担しないという計画だった。都道府県や政令都市以外には、全国にも例がなく、非常に危険という市民からの指摘があった。しかも、免許申請が下りたのはバブル崩壊後、回収不可能とわかってから。にもかかわらず押し切った。

・国の資金援助

計画立ち上げ時、明石市の一般会計約600億のうち事業予算は230億円。現在、埋め立て費用だけで270億円かかっている。事業費一般財源からの持ち出してまかなうことになったのはつい最近。

●国と現場のズレ

・国の海岸整備に関する考え方の変化

環境問題や住民への配慮が見られるようになった(第2回水シンポジウム、河川法の改正、7月初めに行われた林政審議会の国有林野抜本改革の中間報告など)。だが、現場(行政の一線事業部門)は昔の考え方のまま開発計画が進められている(大蔵海岸など)。現場にいるとズレがよくわかる。

・現場、市民、国の意思疎通を

国の考えが変化しても、トップダウンで現場(地方自治体)が変わるには10年かかる。住民からの運動、要望を伝えて下から変えていくことが必要。

●課題

・空洞化の問題

埋め立て地は住宅計画ばかり。人口の減少と整合していない。

人口推計では3割〜4割の減少が予想されている。2020年の神戸市の人口は100万人そこそこかもしれない。

・埋め立て地をどう使うか

埋め立て地の使い途がない。テーマパークばかりではやっていけない。

21世紀の社会・経済状況とからめて開発計画を根本的に考え直す必要がある。

 

 

 

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