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第2回ワークショップ

「新しい海辺環境の創造とビーチクリーンアップ活動」

 

■講演「海のゴミから地球環境を考える」 クリーンアップ全国事務局 小島あずさ氏

 

●国際クリーンアップキャンペーンの経緯

プラスチックゴミによる海洋生態系へのダメージを重視したアメリカ海洋自然保護センター(CMC)が、全米の市民に呼びかけて調査を中心としたクリーンアップを開始し、現在は世界60ヶ国が参加する活動になっています。毎年各地で集計されたデータは各国のコーディネーター(日本では全国事務局)によってアメリカの本部に送られ、世界規模で集計されます。市民調査なので学術調査ほどの精度はありませんが、およそのゴミの状況をつかむことはできます。CMCスタッフのほとんどは海洋の専門家で、普段は基礎的な調査活動や海洋政策の提言などを行っています。

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●日本でのクリーンアップ

・小島氏がクリーンアップを始めたきっかけ

家の回りをきれいにしたいという軽い気持ちでゴミを拾い始めたのがきっかけで、8年前日本での事務局を開設しました。女性3人で用意できるぎりぎりのお金を持ち寄り、自宅のマンションに電話を引いてのスタートでしたが、悲壮感はありませんでした。環境保全活動には色々な切り口がありますが、気負わないでできる、誰にでもどこででもできる、参加者の負担にならない、というのがゴミ拾いを選んだ理由です。

・反響

スタートしたときほとんど門前払いだった省庁から後援名義をもらったり、企業の方から参加の申し出があるなど変わってきました。日本人の環境に対する意識も高まりつつあるのではと期待しています。

・湘南でのクリーンアップ

神奈川の湘南は、ビーチクリーナーを使って地元の美化財団が掃除していますが、嵐が来れば海に沈んだゴミや流木が転がるゴミだらけの海岸になってしまうので、現在、美化財団と協力してクリーンアップを行っています。400〜500人ほどの参加があり、集めたゴミのうち、流木など自然に還るものは海岸に埋め戻しています。

 

●クリーンアップから見えてきたゴミの問題

・海のゴミはどこから来るのか

日本では、海岸ゴミは遊びに行った人が置いてくるものと思われがちですが、人がいない海岸にもゴミは流れ着きます。漂着ゴミには海岸から流れ出るものと船から捨てられるものの二種類があり、アメリカの調査では、海のゴミの52%がプレジャーボートなど遊びのための船から出ていることが分かっています。ちなみに、日本でトップを独走している海岸ゴミはタバコのフィルターです。ゴミは拾ってもこの世から無くなるわけではありませんが、拾うことによって、ゴミを出さない工夫や社会の仕組みを作っていかなければいけないということを参加者に考えてもらいたいのです。人間だけが自然の循環に乗らないゴミを無造作に捨てていることを理解してもらわなければ、ゴミは増え続けます。海は既にゴミ箱状態で、悪化の一途をたどっています。

・プラスチックゴミの怖さ

近年急速に増えているゴミは、自然に還りにくい材質に変わってきました。特にプラスチックは優れた特性のため、あっと言う間に製品が増えた一方、捨てられたプラスチックの輪にひっかかり抜けられなくなった海ガメ、アザラシなどの被害も増えています。かつては自然繊維でできていた漁具も、今は化学繊維で作られているため、ロープに引っかかったり釣り糸にからまったりすると、成長につれて首が締まり、自然界で生きていく上で大きなハンデになります。

・汚すのではなく殺すゴミ

体重5?のカメの胃から1?のプラスチックの破片が出てきました。毒ではないからすぐに死ぬ

 

 

 

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