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ことはありませんが、排泄も消化もしないのでお腹に溜まって満腹感を与え、結果的に餓死してしまいます。餌のクラゲと勘違いしてポリ袋を食べ、喉に詰まらせて死ぬウミガメも多いですし、近海で見つかるウミガメの死体からはコンビニのおにぎりの袋がよく出てきます。毎年、絶滅寸前の種を含む2、3万頭の海洋ほ乳類が、ゴミによって命を落としているとも言われています。動物だけでなく、海に沈んだ大量のゴミで潜水夫や海女が危険な目に遭うこともありますし、船のプロペラにビニールが絡まったり、船のエンジンがポリ袋を吸い込んで故障するなど人命にも関わりかねません。

・レジンペレット(樹脂の粒、プラスチックを作るための中間材料)

偶然や事故で流れ出るのですが、小さすぎて拾えません。魚の卵に似ているため魚卵を餌とする生物が好んで食べてしまいます。プラスチック業界も対策を講じているのですが、注意が行き届かないのが現状です。このレジンペレットに、遺伝子に影響を及ぼす内分泌撹乱物質が付着している可能性が指摘されていますし、化学物質による異変で雄しか生まれない貝も報告されています。遺伝子への作用は、将来を考えると、恐ろしい問題です。

 

●クリーンアップの魅力と成果

・ネットワークの素晴らしさ

クリーンアップは、世界中で海をきれいにするために、普段は別々の仲間が十年に1度同じ気持ちになり、どこに住んでいても参加できるところに魅力があります。ナホトカ号の重油流失事故では、滅多に会わない仲間が離れた場所から支援できるネットワークの素晴らしさを実感しました。

・具体的なデータ収集の成果

広島では発泡スチロールのゴミが多いことが明らかになりました。カキの養殖筏を浮かべるためのフロートがこすれて剥げ、海岸に粉雪のように積もっていました。県の水産課などに対策を提案し、地元の協力で硬質のフロー卜を生産していただき、漁協の人に使ってもらえるようになりつつあります。「ゴミが多い」というだけでは苦情にしかなりません。数字があれば比較ができ、耳を傾けてもらえます。小さな成果ですが、ただ拾っているだけではできなかったことです。

 

●今後の展開

・2000年の解散を目指して

クリーンアップの活動を始めるときに決めたことは、データを取るためにも10年間は続けること、余裕を持ちニコニコできる範囲ですること、必ず解散すること、の3つでした。2000年までにゴミ拾いのいらない社会にはならないでしようが、一応の終止符を打って別の形で活動するつもりです。

・攻めの展開で

アメリカのCMCでは、来年の「国連海の年」に大規模な計画を立てています。21世紀からは攻めの展開でということで、2年前からデータ収集結果をもとに業界、企業も加わり、ゴミを出さないための対策専門会議を開いています。また、一般の参加者に報告するフォーラムの開催も考えています。

 

●質疑応答

【質問】民間企業との協力は?

【回答】専門会議のオブザーバーとしてプラスチック工業連盟の専務理事に参加いただき、クリーンアップにも参加してもらっています。ゴミを出したといって突き上げるスタイルにはせず、一緒に対策を考える専門家として力を貸してほしいと思っています。

企業の協力方法は、会場を用意して参加する、スポンサーとして参加する、社内への広報、など様々で、企業OBのポランテイアグループが参加したこともありました。全国レベルでのナショナルスポンサーは、サッポロビール、日本電気、サークルKジャパンなどで、関西事務局でも独自に協力してもらっています。

 

 

 

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