日本財団 図書館


アの経済政策のあり方について、一石を投じた。

 

外貨準備の必要性を強調

 

009-1.gif

 

タイに代表される通貨不安は、アジア諸国にとって大きな問題である。相互依存関係を深めてきた東南アジア諸国にとっては、特に一国に始まる不安が、我が身を巻き込みがちだからだ。このような体制について今後どんな政策をとっていくべきかの議論が、展開された。

高氏は、香港株が急落した事実を認めながらも、「東南アジアの通貨不安が香港に大きな影響を与えることはないと思う」と述べた。香港経済の強さを信じる高氏の根拠となっているものは、香港における「600億ドルの外貨準備」と、対外債務がゼロという優良な経済状態である。

 

009-2.gif

 

スパチャイ氏は、タイ経済が混乱している原因を「金融だけでなくマクロ経済の運営にある」と指摘した。「新しいグローバル経済は、より柔軟なマクロ経済の政策運営を要求している」との見解も示して、アジア各国の政府が、経済のグローバル化に慎重になっている現在の状況に不満を表明、「アジアにも経済協力開発機構(OECD)のような機関が必要ではないか」と具体策を示した。「アジア開発銀行(ADB)がそうした会議を主催し、マクロ経済政策を体系的に語りあい、協力分野を模索する場をつくりたい」というのが、スパチャイ氏の要望である。

スパチャイ氏が政策関連の機関を提唱する一方で、佐藤氏は、アジア各国の通貨の安定のために、日本政府が提案した「アジア通貨基金」のような存在が必要だと説いた。投機筋が動かすホットマネーが一日に500〜600億ドルなのに対し、「アジアの多くの国での外貨準備は200〜300億ドル」であることを示し、「市場の行き過ぎた相場変動に共同介入する資金にしたり、緊急の外貨準備の補充にあてたりすることは意味のあることだ」とアジア通貨基金の必要性を強調した。

 

009-3.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION