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企業も積極的に処理施設の設置等の対策を講じた。企業は、廃水処理.排ガス処理などの排出口で講じる対策技術だけでなく、製造施設や工程の改善、省資源、省エネルギーの徹底により公害対策を行う技術(低公害型生産技術=クリーナープロダクション技術)を導入して、環境対策を進めた。この方法は環境改善だけでなく、生産性を向上させ、経済的効果ももたらすものであった。

市民、企業、行政が一体となって取り組んだ公害克服の経験と技術を生かした環境国際協力は世界的にも評価を受け、1990年に国連環境計画(UNEP)から「グローバル500」を、1992年ブラジルで開催された地球サミットにおいて「国連地方自治体表彰」を受賞した。また、1994年の「地球フォーラム'94」(イギリス、マンチェスター)や「環境と開発に関する中国国際協力委員会」(中国、北京)への招聘など、海外から多くの参加要請がきている。

 

2)住民参加による「北方地区」の街づくり

「北方地区」は約31haの中の1900戸の低層住宅に約4,000人が住む密集地であり、道路は狭く、住宅も古く、非常に劣悪な住環境であり、失業者も多い地区であった。この地区の改善計画にあたって、市は現地に事務所を設置するとともに、市、住民及びコンサルタントによる協議会を発足させ、住民の多様な意見を尊重しながら、広範囲にわたる地区の改善を行った。この地域は 「もやい」という、 ともに助け合う生活習慣や地域文化の残るまちであり、改善計画に住民が参加することにより、従来の助け合いができるような構造を持つ街づくりが行われた。住民の参加意識の高まりにより、1982年からわずか10年間で事業は完了したが、その後も、活発なコミュニティ活動や交流が行われている。

特筆すべきは、国や市の公共投資によって、建設労働など地区住民の新たな雇用が創出され、地区の経済基盤が浮揚したことである。また開発によって当該地区やその周辺のイメージが著

 

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