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十年来の計画経済から計画経済と市場経済の併存を経て、最終的に市場経済へ転換する過程で、養老保険等の社会制度は市場経済の発展に従い、その制約を受けることになる。「変換」の二は、この十数年の継続的な経済成長によって、21世紀の初期には、総合的に社会経済水準は向上し、産業構造と労働就業構造が大きく変わる。都市化の進展も一層拍車がかかり、大勢の農村の労働力が第二と第三産業に移り、農村から都市に移住するため、中国全国の伝統的な家庭養老の基盤もさらに揺れ動かされるであろう。その「変換」の三は、上海市や北京市などの大都市のみでなく、中国全体の人口高齢化が進む。但し上海市は一時的に若返りをみせるかもしれないが。高齢者人口の増加は、社会の構造、消費構造、産業構造を変え、社会の養老負担も増加させる。国民経済の中で蓄積と支出の比率などにも影響を及ぼす。

このような「変換」の中で「養老」の社会的考え方やシステムも「変換」せざるをえないが、その「変換」は漸次、家庭養老から社会養老へと移行することを予測しなければならない。社会の発展に伴いいかに家庭養老と社会養老の方式のバランスを保つかが問題となる。

 

ここ数年、上海市は以下のことに全力を尽くしてきた。第一は、老後扶養の面において、1990年代の始め頃から、社会全体の養老保障制度の改革を進めてきた。1950年代から実施されてきた企業等各事業所ごとに異なる養老金(年金)支給のシステムを変え、養老年金の社会的総合的運用と個人積立システムを取り入れた。上海市は古い商工業都市であり、50年代から従業員の養老年金は、すべて勤めた企業が負担してきたので、長い社歴をもつ企業は養老金の負担が増大し、競争力が弱まり、なかには赤字経営となる企業も現われた。退職者も年金がもらえず不安定な状況に陥ったからである。ここ数年の状況を見ると、成果は徐々に現れており、約180万人の退職者の中で、企業の赤字経営によって、養老年金をもらえないという者は極めて例外的になった。

第二は、経済の発展につれ、インフレも高騰している中で、いかに退職者の基本生活を保障するかが課題である。上海市は毎年4月に養老年金の調整を行っている。養老年金を物価指数にスライドさせることによって調整し、高齢者の生活を保障する。但し、現行のシステムでは十分ではない。

第三に、21世紀の人口高齢化の最盛期に備え、次の準備をしている。

 

 

 

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