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己保障の意識が高まり、個人の利益の見地に立って積極的に養老保険に参加するよう仕向ける制度である。

 

また、企業の負担は従業員個人の老後の給付金額にかかわるので、従業員自ら企業の負担を催促し、企業の従業員給料総額のごまかしや税金の不正などを防ぐことができる。しかも、個人の負担分と会社の負担分を照合すれば、保険料を正確に納めたかどうかも分かる。今までは社会養老保険に参加していなかった新しい企業や個人営業者なども相次いで社会養老保険に参加するようになっている。

さらに、養老保険制度の実施によって、定年退職直前の給料額が直接に養老金にかかわる従来のシステムから、従業員の一生の仕事と給付に関係するものへと変わり、各段階の給料額や負担額がすべて養老金とつながるので、権益と義務が統一され、貢献度と享受の程度とが結び付く原則が一貫するようになった。

?改革後の養老保険は資金集めの方法を根本的に変え、資金の蓄積に役立ち、人口高齢化のピークの到来に備えるものとなった。

(2) 農村部における社会養老保険の方法―改革を実施する前

中国では、農村養老保険は国の規定により、政府が農村高齢者の基本生活を保障する社会保障事業を行うこととされており、これは中国の社会保障制度の重要な部分であった。これまで永い間中国の農村では家庭による伝統的養老方式が広く維持されてきた。中国政府もまた、これからも相当長い期間、農村における高齢者の老後は主に家庭に頼るべきという方針を保持してきた。ところが、農村家族の核家族化、人口の高齢化につれ、農村の扶養(老有所養)問題も次第に深刻になってきた。1986年に国務院・民政部は、農村地域を対象に実験的な社会保障制度を立案せよとの指示を出した。その後各地で様々な制度が研究され検討されてきたが、1992年1月『県級農村社会養老保険基本案』が作成され、これをもとに農村社会養老保険制度の基本方針が決められた。その内容は、?農村の実際的な状況に即して高齢者の基本生活を保障することを基本的原則として、その資金は個人が負担することを主とし、付帯的に集団補助を加えること、また自主を中心とし、付帯的に相互救済を加えるとするものである。そして、社会養老と家庭養老を結び付け、農村の農業従事者と企業勤務者、また商業従事者

 

 

 

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