日本財団 図書館


会、上海市体制改革委員会、労働局、人事局、財政局、総組合、上海市老齢委員会などの部門からの代表によって改革委員会を構成し、専門家や大企業の代表を集め、大量の調査研究を行い、数種類の改革案を作成した。上海市常務委員会、市政府は数回にわたって調査研究の報告を聞き、検討を繰り返し、最終的に統合的運用と個人積立制を併用する方式を、新しい養老保障方式に導入することを決めた。その概要は、法定の基本養老保険について、従来の年金も統合して運用すると共に、新しく個人が納める保険料を貯蓄方式で積立て行き、これも総合的に運用する保険システムを導入し、年金保険加入者は総て個人ごとに養老保険口座を作ることにした。この方式を採択した理由は、次のように考えられる。

? 人口高齢化の必要性に適して

上海市は中国で最も早く人口の高齢化が進んだ都市である。高齢者の人口が人口総数に占める比率や、定年退職者の現役従業員に対する比率は全国一位であり、扶養問題を含む人口高齢化の問題は他の地域より深刻である。中国では、定年退職者に対する年金は各事業所が支給しなければならないため、企業が負担する定年退職者に支払う年金額は給料総額の25.5%にもなり、その負担は極めて重い。蓄積がほとんどない企業も多く、支給額が収益を上回る企業も出るに到ったのである。

 

推計によれば2000年には上海市の定年退職者は200万人にのぼり、2020年代の人口高齢化のピーク時には、定年退職者は350万人にのぼると予想されている。その2020年のとき、在職中の従業員は700万人(現在498万人)と推計されているが、その時に必要な年金は在職従業員の給料の35〜40%に相当し、国や企業がその年金をすべて負担することはとうていできない見込みである。資金を集める道を広げ、個人も保険料を負担する自己責任制を導入し、個人貯蓄を併用し、養老基金の蓄積を増す制度の導入を選んだのである。

もう一つの措置は、養老保険の被保険者を拡大することであった。今まで社会保険の対象外となっていた私有企業、個人営業そして新しい合弁企業、外資企業もカバーするようにし、そこで働く者を広く参加させてゆき、養老保険制度を整備することであった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION