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また、女性が妊娠出産を終え、子どもが保育園に入るまでは祖父母に預けるケースも多い。子どもが保育園に入ってからも、その送り迎えを祖父母がしてくれるのが普通である。若い夫婦は仕事を終えて、親の家へ直行し、親が作った夕食を食べ、子どもを通れて自分の家に帰り、休む。同じ日々が何年も続く。それは例外的な現象ではなく、ごく普通のどこにでも見られる上海の勤労者家族の光景である。

 

子ども夫婦が親家族からさまざまな援助や協力を受けていることによって、夫婦共働きの家事や食事、子どもの世話といった問題が緩和され、生活に関わる不足と不備を補っている。親家族が自分たちの子どもに必要とされ、自分の協力によって子どもの負担を減らすことができ、しかも毎日孫の顔も見られる状況は、今日的「天倫之楽」となっているといえよう。こういう現象について、これでは子ども夫婦が長く親に頼り、いつになっても自立しようとしない人間となってしまう危険が大きく、これでは次の時代を担えないのではないかと、心配する人も少なくないが、その解決策があるわけではない。

こうして親が子どもに尽くしていても、一旦健康を失ってしまうと、子どもは仕事と育児に追われているから逆に親の面倒を見る余裕がない。子どもが多い時代にはそれぞれが交替で都合をつけ、親の世話をしたものであるが、現在は子どもが少なくなり、親の世話をする気持ちがあってもなかなかできないのが状況になっている。さらに21世紀には子どもの数は一層少なくなり、高齢者の介護問題はますます深刻になるであろう。

2) 「留守役老人」と呼ばれる高齢者の増加

80年代の改革開放以来、中国からは公的派遣、私費留学と学者の訪問などで海外の103カ国と地域に25万人が赴き、そのうちの8万人が帰国している。上海市からの海外留学者は7万人に及び、すでに帰国した者は1.5万人である。この帰国者はいろいろな分野で活躍に従事し、上海市の発展にも貢献している。また、留学生には中国政府は「留学を励まし、帰国を歓迎し、行き来は自由」という政策をとっている。学位をとってから帰国したいなら、もちろん歓迎し、また長期にわたって、海外で仕事や勉強に従事すると同時に、中国の研究機関や大学との共同研究、中国での短期仕事・講義、事業に投資などの方法を通じて、国の発展に貢献することも奨励される。もし彼らが海外

 

 

 

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