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に永住し、華僑になれば、国内にいる親は《中華人民共和国帰国華僑僑族権益保護法》の対象にもなる。このように子女が海外に仕事や留学で出国している親のことを「留守役老人」と呼ぶ。

「留守役老人」は高齢者の中で特殊な存在である。正確な統計は公表されていないが、上海市ではおおよそ6万世帯であると見込まれている。その特殊な統計上の集団は子どものいない「社会老人」や定年退職高齢者とは異なり、子どもがいるとはいえ、実際にはその子どもに頼れない人々である。「留守役老人」は北京市、上海市などの大都会に多い。

 

上海大学文学院社会学研究所及び上海市老齢委員会が1995年7月に行った調査によると、調査対象となった「留守役老人」のうち、配偶者が健在なのは68%、配偶者が死去または離婚したのは32%、一人暮らしは19%、夫婦のみの家庭は54%、核家族は5%、直系家族は21%、高齢者と孫のみの家庭は1%となっている(上海老齢科学1996年2号46ページ参照)。

「留守役老人」の基本的特徴は、(1)知識人と幹部層が多数を占める。上海市のある大学経済学部定年退職教授・助教授(定年になって、必要に応じて留任された教授を含む)22人のうち、14人の子どもが留学か仕事のため海外におり、63.6%を占める。その14人のうち、10人は子どものすべてが海外にいる。(2)年齢構造から見れば、「留守役老人」の中に、55歳前後の人、または60〜69歳の比較的低年齢の高齢者が最も多く、70〜79歳の人は少数であり、80歳以上の人はさらに少ない。(3)彼らの多くは定年退職後、再就職している。(4)経済状況では子女から仕送りを受け、生活の水準は普通の高齢者より高いという見方は一般的であるが、実際中流クラスの人が多く、たいてい年金だけの生活で、子女から支援を受けている人は少なく、特に定期的に仕送りをうけている人はさらに少数である。(5)彼らの多数は健康または比較的健康で、当面身の回りのことは自力でできる。しかし、今後彼らが年を取れば、状況が大きく変化すると予想される。

 

「留守役老人」は一般に高い技能か豊富な知識をもっている。彼らは定年退職後も科学技術研究、教育などの分野で、顧問などの仕事で再就職する人が多く、社会の大切な人材でもある。彼らは長期にわたって国内で暮らし、親友も国内におり、違う文化的背景の外国で生活

 

 

 

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