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設に入所していてもそれは家庭養老といい、逆に家に住んでいても生活費用は一切政府からの提供に依存するとすれば、それは社会養老と呼ばれる。

 

中国の経済は発展途上であり、近年の急速な経済発展が注目されているが、人々の生活水準はまだ低く、高齢者の社会保障に使える財源も乏しい。

《老年人権益保障法》では「高齢者の養老は主に家庭を頼る」と規定されている。その理由は、第一に、家庭養老は中国の伝統的養老方式である。中国の家庭養老には数千年の歴史があり、中国の歴史においても、経済社会の発展段階、さまざまな文化的伝統、政治的基盤など深くかかわって来た。また民族の価値観、倫理観とも一致している。それゆえ、長い歴史を通じて家庭養老の伝統的方式は終始存在し、高齢者を尊敬し、扶養することは美徳として受け継がれて来た。今日においても全中国では家庭養老は依然として主な養老方式である。第二に、家庭養老を中心とする養老方式は当面の中国の国情に合致している。中国は高齢人口が多く、高齢者の総数は世界の高齢者の5分の1を占めるが、その中国の高齢者の4分の3は農村に住んでいる。農村社会はまだ社会保障の水準が低いため、彼らはほとんど養老金の収入はなく、大部分の人は家族を頼るしかない。また、都市部においては、養老金をもらえる高齢者は定年退職者は多いが、高齢者に提供される設備やサービスが不足し、高齢者の日常的な世話や慰めは子女や家族を頼らざるを得ないのがほとんどである。第二に、家庭養老を今後の養老方式として考えようとする新しく外国の「福祉国家」の経験から教訓を得たのである。先進諸国は社会養老を主な養老方式としてきたが、それはそれらの国々の条件と合致していたからこそ、できたのである。その条件とは、いずれの国も早い時期から工業化を達成し、高い生産性を保持して来たが、その人口も少なく、高齢者の人口も絶対的に少ない。しかも、経済発展が先に進み、人口高齢化はその後に続いた。「先に豊かになってから高齢化を迎えた」のであり、これこそが高い水準の福和とを実現できた条件である。しかし、先進諸国では最近政府の財政負担の問題が深刻化しているのは問題である。中国の実情から判断し、中国の現状にあった道を選ばなければならない。

 

 

 

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