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の改造によって郊外や市の周辺部に移った人口は100万人以上にのぼったので、これが新しい社会現象として高齢者と子どもとの別居に拍車をかけた。親の面倒を見たくても実際には見られないのが現状である。(4)一部の高齢者はまだ生活保護ラインに近い水準で暮らしている。定年退職者の中で生活保護ラインにある高齢者は約4%、約8万人存在する。以前では敬老院等に入所してもおかしくない人々であるが、高齢者福祉施設は既に満員であり、要介護者が沢山待っている状況である。また、高齢者の活動する場も少なく、どこの高齢者活動施設も満員盛況である。施設整備が急がれるのが現状である。

(3) 高齢者の家庭扶養と社会扶養

中国では家庭養老(扶養)か社会養老(扶養)かは高齢者の生活資金の出所から判断されている。扶養を受ける者の生活の費用が家族から提供される場合は、家庭養老(扶養)とみなされる。逆に、生活費用を社会が負担し、養老基金から提供される場合は、社会養老(扶養)とみなされる。人類社会の発展から見れば、老後保障の様式や水準は社会経済の発展によって制約される。自然経済を主とする農業社会では家庭養老保障が主なパターンである。家庭は生産単位であり、消費単位でもある。中国は全社会的にこのパターンが主であった。家族員が共同で労働をし、労働の成果を共有し、残りは蓄積され家族員の共有財産となる。年を取って、経済面では子女に依存して老後を過ごすのは当たり前のことである。出産育児も投資は少なく、収益は大きい一種の投資の手段とされて来た。成人にとって最も大きな投資は多くの子どもを育成することであり、老後は子どもの働きの成果に支えられて過ごす。いわゆる「子どもを生んで老後に備える」のである。家庭養老は高齢者と若者の世代間の交流にも積極な意味を持っていた。但し、子どもに恵まれない家庭や子どもに先に立たれた家庭などは、苦しい生活に陥る恐れがあるため、それは社会全体で保護することが必要である。しかし、社会が発展し、小規模農業生産から大規模工業生産に転換して以来、中国でも家庭の生産機能は縮小し、家庭養老の機能も低下してきた。そして、工業化の進展などにより、今日では、若者は親元を離れ、外の地域へ出稼ぎに行ったりする現象は中国の至るところで見られるようになった。

家庭養老と社会養老の区別は生活資金の出所によって区分され、住む場所とは関係ない。たとえば子女から生活資金を受けて、高齢者施

 

 

 

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