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である。国際的現状では、通常先進国は65歳を高齢者の出発年齢としているが、発展途上国は60歳を高齢者の出発年齢としている。中国は発展途上国なので、現在は60歳を基準とするのが妥当と思われている。

 

1. 中国の人口事情と上海市の高齢化

 

(1) 国の人口事情と人口政策

中国は、1979年「一人っ子政策」を提唱することになったが、これは現代化を図り、経済発展のためである。経済を発展させ、人々の生活水準を向上させるためには、適性な人口発展が不可欠である、過去の人口増加と人口構造から今後急激な人口増加が予測される。その急速に増加する人口を抑制し、全人口を21世紀までに12億程度に抑えたいからである。

「中国の人口増加は長い中国の歴史の上で形成された伝統的結婚、出産の倫理観に原因もあれば、50年代に政府の政策によるものもある。『多子多福』、『不幸有三、無後為大』(親不孝は三つあるが、跡継ぎがないのが最も大きい)などは家族を生産単位とし、肉体労働を主とした農業経済の産物であった。この経済体制にあっては、多くの子(男児)を生むことに実質的な価値があり、労働力の多少が家族の生活に密接に関係する。子どもが大きくなれば労働力になって家のために稼ぐことができる。1949年人民共和国の建国後も数十年、この倫理観は広範な農村では変わらなかった。」(費孝通「中国の伝統的倫理観念と人口問題」)

 

そのうえ、建国後の経済政策や人口政策によって短期間で人口は倍増した。1949年以降の中国では、人口の多いことは重要な財産であるという楽観的な人口思想のもとに人口増加政策が進められたのであるが、1953年7月に実施された第1回人口センサス(国勢調査)によって転換を余儀なくされた。つまり4〜5億人と見込まれていた人口が6億193万人と、予想より1億人以上も多く、あわせて洪水被害等による不作・飢饉、農業危機にぶつかった。そのため、1954年9月の第一期全国人民代表大会で、中国において初めて計画出産を公式に奨励することになった。その後人工妊娠中絶が合法化され、1955年から産児制限運動という新路線も定められた。

 

 

 

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