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国家とか地域というもので、一種の超越性を欠いたまま、万人に納得できるようなものをつくれるかどうか、単なる交通規制みたいなものになってしまうのではないかと、これを私は非常に疑問として感じております。

 

●座長:安藤

いろいろご意見、コメントがあると思いますけれども、私なりに最後、まとめさせていただいて、この次に続く、より叡知な会議の参考にしていただきたいと思います。

この会議で取り上げたテーマは、いずれも文化、経済ということですけれども、李先生の報告にあったように、国家と市場というものの間を振れ動いたという点で2日間共通の特色があったのではないかと思います。

これを私なりに整理しますと、人間が全体としてよくなるということを願ってつくったなにがしかの制度、文化の場合、自制的な側面が強いと思いますけれども、それとそのグループを構成している個々人に与えられた選択、自由というか、そういう形でどの問題もまとめることができるのではないかと思います。

田中さんがおっしゃいましたけれども、私もアメリカで勉強した時、外交史の先生の非常に印象的な言葉がありました。それは文明というものは、煎じ詰めれば自制であると、つまり人間が努力して発達させるいろいろな制度というものは、自制するということ、それを忘れたら、マーケットは勝手に動き、国家は目茶苦茶な暴力国家になり、シビルソサエティーといっても、今日のマスコミに見られるようなあの歪みというものを生じてしまう。つまり我々はいつ、何をやる時でも自分が所属しているグループ、それは国家であれ、地域であれ、世界であれ、それと自分との関係というものを視野に入れる必要があるのではないか。先ほど“too much is as bad as too little”と言いましたけれども、そういう観点が恐らく今回の会議を通じて出てきた一つの共通のメッセージではないか。

問題はもう一点、実はこのメッセージをいかに外へ向けて発信するかということです。日本人は従来、特に最後に五百旗頭さんがおっしゃいましたように、戦後自粛しすぎて本来言うべきことまで言わないでいる。これは原先生も指摘されました。過去は過去として、それは顕著に反省すべき点はしたらいいのですけれども、同時に未来に向かって日本としてやるべきこと、あるいは日本自身の経験から世界へ伝えたいメッセージ、それは本当に我々が本気になって議論して、世界へ発信する、そのことが先ほど来言われている公共財の形成の上で非常に大きな役割を果たすのではないかと思います。

いずれにしても、2日間、熱心に討議に参加していただいてありがとうございました。パネリストの先生方から会場に来られた皆さん、そして裏で支えていただいた事務、同時通訳等々の皆様方、この次は中国も入って、そしてより具体的な問題で議論できることを楽しみにしております。

どうもありがとうございました。

 

 

 

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