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でいい、リージョナリズムはリージョナリズムでいいと、しかしそれはグローバリズムと衝突するものであってはならないと、過ぎたるは及ばざるが如し、“too much is as bad as too lettle”今の3つのイズムを考える場合に、やはりそういう適当なバランスというものが必要ではないかということです。

また、最初のキーノートスピーチで山崎先生がおっしゃったように、人間には個体を保存したいという本能と、その集団、自分の種を保存したいという本能とがある。それから言えば家族を守るというのはかなり自然なんですけれども、同時にそれが全体にとって非常にマイナスとなれば、回り回って家族にもマイナスが跳ね返ってくる、その辺のバランスが大事ではないかと思います。これはサステイナブル・ディベロプメントも同じことであって、今、世代間の公平、インタージェネレーショナル・イクイテイィーと、つまり今の世代が、例えば地球のある資源を極度に使ってしまったら、それは我々の子供、孫の時代にどういう形で跳ね返ってくるか、そういうことを考えないといけない。やはりここでもバランスですけれども、そういう発想が言えるのではないかと思います。

 

●白石 隆(京都大学東南アジア研究センター教授)

どうも最近の日本人は薄汚れているのではないかと、バンカーだとか、大蔵官僚はろくなことをしていないではないかということをおっしゃった方がおりまして、それに関連して、私は先ほど五百旗頭さんが強調された公共性ということの重要性を改めて強調したいと思いますけれども、結局日本の場合には公的なものと私的なものとがあって、そこでの公私の別、それから公共の利益の重要性ということが言われているのですけれども、それが恐らく裏切られているということが、今の日本の政府に対する、あるいは民間の企業に対する非常な不信感になっている。

同じことが実は国際的にも言える。国際社会というのは非常にアナキーな世界で、国家というのはそれぞれ国益を追求するものだと言われてきたのですけれども、恐らくもうそうではないだろうと、むしろ国際的な公共性というものを追求する中で、実は同時に国益をも実現していく。そういういわばしなやかな発想と行動というのが、恐らく今、一番大事になってきている。現在の危機をどういうふうに処理していくか、克服していくかということも、突き詰めて言えばそういう問題、つまりそこでどういう答を出すのかということになるのだろうと思います。

ですから、実は日本は国内的にも国際的にも実は非常によく似た、あるいは同じ問題に直面している。それをやはりきちっと片付けないことには、そして片付けなければ21世紀は大変だというふうに考えております。

 

●パカセム

規制をかいくぐる汚職銀行家と、銀行における門閥世襲制の二つの関連する問題について申し上げます。先頃、ロンドンのガッチャーが行った、ホワイトカラー犯罪に関する調査をまとめた優れた報告書が発表されました。銀行家への対処方に関しては二つの哲学があります。米国の連邦準備制度理事会は、「他人の金を動かす者は詐欺師だ。したがって十分な規制が必要である。」と述べています。米国ではこのような犯罪はかなり減少しています。この規制は、米国の優れた点です。連邦準備制度理事会は多極分散型の規制のもとに置かれ、銀行制度に対する十分な監視を行っています。

連邦準備制度理事会は非常に厳しい規制のもとに置かれています。しかし、ヘッジファンドに対しては規制を行っていません。連邦準備制度理事会が規制の対象とするのは銀行なのです。一方、「他人の金を動かす者は紳士だ。したがって自主規制に委ねるべきだ。」とする、イングランド銀行を発祥とする哲学があります。東南アジアの中央銀行の総裁の多くは、かなりこのイングランド銀行の哲学を受け継いでいます。例えば、優れた総裁委員会を持つタイランド銀行がその一例です。タイランド銀行では、総裁委員会を、ボードオブガヴァナーと呼ばず、イングランド銀行に倣って、アコードオブガヴァナーと呼んでいます。銀行家は紳士だというのが社会通念でしたが、実はその多くが詐欺師でした。門閥世襲制による銀行の悪弊は、たとえようがありません。門閥世襲制で運営されるほとんどの銀行が、一族から会社を起こしており、世代を経て次第に公営企業となっていくのです。モーガンJ.P.モーガン社も、元をたどればP.A.モーガンー族の経営する世襲銀行でした。その第三世代が公営の銀行となったのです。タイの銀行制度では、国内銀行50行のうち30行が世襲銀行です。今回の危機で生き残れる銀行は僅かです。近い将来には、銀行の体質改革が進むでしょう。タイ政府がすでに4行を買収しており、その他の銀行は国際銀行となる予定です。

 

●田中優子(法政大学第一教養部教授)

白石さんのお話にもあったのですが、私も五百旗頭さんがおっしゃった公共性ということと、グローバライゼーションということとをつなげて考えてみました。

徳という言葉が出てきましたけれども、徳という倫

 

 

 

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