というようなことが言われております。東京もある点ではそうだったわけですけれども、こういう問題をどう解決するかというのが大きな問題として残っているわけで、単なる現在の経済危機をとらえる短いスタンスではなくて、広い、もっと深い、背後にあるシステム全体をどういうふうにとらえるかという問題が、価値観とか、あるいは知恵といった問題と結びついて出てくるのではないかと思います。
最後に、よくこういう会議で出てくるジェンダーの問題、これももちろん問題なんです。アジアのことを考える時はジェンダーの問題は確かにあります。それからNGOとかNPOの重要な役割について、やはりもっと議論をすべきだとか、いろいろな問題は残ると思いますが、私が先ほど申し上げましたこと、アジアの個人とは何かというのを問題提起として最終的に行いたいと思います。
我々はアジアの叡知というものを、こういう機会に知恵を出し合って、アジアの社会、文化あるいはシステムをどうつくっていくかということをもっと青写真を描くような形で出していきたいというふうに思います。
●座長:安藤
どうもありがとうございました。
それでは、第3セッション、経済は原先生にお願いいたします。
●原 洋之介(セッション3座長)
私の経済のセッションで何が論じられたかというと、経済の金融部門の非常に速いグローバライゼーションというのは、やはりえらくコストがかかるものであるということであった。
ピシットさんは、規制されない金融活動というのでしょうか、多国籍企業とかファンドの規制されない短期の資金移動はいろいろなトラブルを生むということを指摘されました。そのことは、投機と投資、スペキュレーションとインベストメントというのがありますけれども、これはある経済学者に言わせると区別はできないと言いますが、どうも投機と、長期のものづくりのためにお金を使う投資とをどこかで分ける必要があるのではないか。そのためにどういう規制、基準があり得るかと、そのような議論が第3セッションでは議論されたように思います。
それを踏まえまして、パネルではさほどはっきりとした議論にならなかったことを少し問題提起をしてみたいと思います。
昨日のセッションにも今日のセッションにも歴史的な視点ということが強調されましたが、危機が次の発展の一つの鍵になるという面がある。歴史的には危機が来て、それへの対応でまた新しいシステムができる。そんなふうになっていくと思います。
しかし、問題は放っておいたらいいのか、何も政策的な介入とかいろいろなことをやらなくて、自然に次の発展のパスが自生的に出てくるのか、出てくるとしてもかなり時間がかかるとその間のコストをどう負担するのか。インドネシアの政権が倒れるかもしれない、そういったことをどう考えるのかというのが我々の問題だろうと思います。
アジアには確かに長期的には経済成長力があるだろうと思います。例えばピシットさんが彼のペーパーの最初に、アジア開発銀行が出しました「エマージング・エイシア」という本を引用されております。この本を見ますと、1820年に中国、インドを含むアジアというのは、世界のGDPの実は58%を占めています。ところが1950年になりますと、これがヨーロッパ、アメリカなどの振興によリアジアの比率は19%に落ちました。それで「アジアの奇跡」と言われた高度成長で、1992年にやっと中国、インドを含めて33%に戻っている、そしてこのままアジアの成長が続くと2025年にはこれが何と200年前の1820年と同じ58%に戻るのではないかと、こういうことで「リエマージング・エイシア」と言ったわけです。
そういう潜在力、数字がどうかということはテクニカルな問題で今はあまり言いませんけれども、長期的には、世界経済の中でのアジアの位置というのが上がっていくとして、危機の後、何もしなくてもそういう流れが再度自然に出てくるかというと、必ずしもそうではないのではないかという気がしております。
ここでやはり歴史のサイクルといったことを考える必要があると思うのです。実は京都大学経済研究所の佐和教授が最近、「21世紀のケインズ問題」という言い方をしております。つまり世界の経済の流れには大きなコンドラチェフの波動がありまして、過剰生産による不況がくる可能性がある、こういう指摘を佐和さんはしているわけです。この時に我々が考えなければいけないのは、この会議で出なかった中国の問題だろうと思います。中国が非常に労働集約的ないろいろな財で、今日山野さんの話にもちょっとあったのですけれども、投資過剰になっている。この中国の過剰生産傾向というのがどうなるかということはやはり非常に大きな問題でして、私も、楽観的に放っておけば危機がADBの言う成長経路に、自然に回復するとはとても言