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然続いていた状況の中、ついに破綻力ざ生じました。それゆえ、グローバライゼーションから学んだ一つの大きな教訓は、アジアにおける金融の自由化のためには、資本の開放的かつ健全な運用の基礎条件をより充実したレベルで構築する必要があるということです。資本の逆流出の対処方を学ばなくてはなりません。アジアの金融部門は、他の部門と比べると遅れをとっているからです。資本流出に関し学習しなければ、海外の銀行家や証券会社の経営陣、通貨トレーダーの見解に大きく依存することになります。次の世紀でも、アジアが経済成長をするためには、こうした部分を強化する必要があります。

三点目として、南アジア諸国では、グローバライゼーションを見据え、地域的な対応と規制による対応で地域協力と国際協力の必要性が非常に高まっています。新たな地域メカニズムヘ向けて、通貨協力体制を強化する必要があります。次の世紀に、新たなグローバライグローゼーションの過程に対応するためには、アジアが国際通貨協定と通貨協力に関して、地域ぐるみで、内ではなく外に向けて働きかける必要があります。ここで地域主義とは内へ閉じることではなく、外へ開くことを意味します。

四点目として、規制による対応のためには、IMF、世界銀行、アジア開発銀行、WTOを中心とした国際機関の役割を強化する必要があると思われます。現在のルールは50年前にブレトンウッズ体制のもとで作られたもので、すでに時代遅れとなっており、新古典派経済学も登場していることから、新しいルール作りが必要となっています。

五点目として、このアジアの叡知会議が開催された理由の一つとしては、中国の将来、特に中国の通貨、元をめぐって懸念が高まっていることを示していることが拳げられます。中国がアジア各国からの圧力にもかかわらず、通貨切り下げを実施しないと約束したとはいえ、中国の通貨価値が下落すれば、アジア地域と世界の通貨は壊滅的な打撃を受けるでしょう。中国は世界市場にさらされるほど自由化が進んでいなかったため、現在安泰に見えますが、日本を含むアジアが問題を抱える今日、中国は一国で完結できるのか、という問いが折に触れて問題となっています。

最後に、アジアの将来を大きく左右するのは、アジア諸国に対する米国と日本の対処の仕方であり、両国の敬遠策ではありません。昨年七月、タイで最初に問題が表面化した際、米国財務省は救済努力を敬遠しました。しかし、その後韓国とインドネシアが破綻し、米国は金融恐慌が全世界に波及するのを防ぐため、エネルギーと資源の援助を準備し始めています。なかでも、米国政府は日本政府に対し、国内市場を開放することでアジア経済の救済をリードするよう求めています。日本が内需を刺激し、国内での商品の流通を促進するよう一層努力しないかぎり、米国は議会を通じて活動している保護主義圧力団体に迫られて、今後五年間、アジアからの輸入品に抑制を加えるでしょう。アジアを救う人物となるかも知れないキッシンジャー教授の発言を、改めて引用させて頂きたいと思います。キッシンジャー教授は今月、バンコクで、アジアの金融市場で現在起きているむこうみずな行為をコントロールするための警告システムを設置するために、先進7カ国蔵湘・中央銀行総裁会議等、国家、政府首脳による緊急会談を開催し、アジア経済危機に緊急に取り組むべきだと述べています。イラクにおける軍事行動と軍事問題が徘徊するなか、クリントン政権がアジアの危機を放置しないよう、教授は望んでいます。「アジアの経済危機を政治危機に変容させ、アジアを再び不安定な無政府状態にさせてはならない」と、キッシンジャー教授警告しています。

私たちASEAN諸国は、日本からの迅速な支援と、その援助の大きさを極めて高く評価いたしております。榊原大臣は、日本政府は、タイ、インドネシア、韓国へ向けた数十億ドルの救済融資の最大の単独出資国であると述べています。しかし、マレーシアの大蔵大臣で副首相で慧眼な人物、アンワー氏は、まだ日本の態度は消極的で、日本がもっと前面に登場すべきだと述べています。

 

●座長:安藤

パカセムさん、どうもありがとうございました。

4名の方々、それぞれ10分ずつでお願いしたいと思います。パカセムさん、非常に厳格に時間を守っていただきましてありがとうございました。

では、次に移ります。

 

●青木 保(セッション2座長)

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違う方向から、文化の問題を取り上げてみたいと思います。

「アジアの叡智会議」というのは非常に象徴的で重要だと思うのですが、また一方で最近は「アジア的価値」というものについて、アジア諸国でさまざまな議論が起こっております。これは基本的には西洋的あるいは近代的な価値に対して、アジア的な価値があると主張する言説ですが、政治的にも経済的にも、あるいは文化的にも行われております。

文化というのは確かに経済成長に比べるとウエイト

 

 

 

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