昨日も初めに申し上げましたが、この会議は特定の結論に達するということを必ずしも目的としておりません。それより、それぞれに問題のある4つのトピック、まずアジアとは何かというそのこと自体、これは白石先生のほうから、単に空間の問題ではなく時間という視点を入れて考える必要があるというご提言があったと思います。その意味でアジアそのものについては何かと、これは第1セッションの座長であったパカセムさんのほうからご報告をいただきます。
それから、2番目、3番目、4番目は、現在地球を覆っていると言われるグローバライゼーション、適当な日本語はないのですが、地球化というか、そういう影響がまず文化、アジアのいろいろな文化にどういう影響を与えるか、次にそれが経済にどういう影響を与えるか、そしてそういうものを踏まえて、アジアの国際関係というものを特に21世紀に向かってどのように考えるべきかと、それぞれ非常に大きい、かつ我々の知識に刺激的なテーマで検討してまいりました。もっとも、そういう大きなテーマについてこういう集まりで一つの結論が出るというのは、私はむしろ危険ではないかと思います。ある意味でいろいろな意見の散らばりがあったほうが健康であります。
その意味では、4人の座長には先ほどお願いいたしましたが、それぞれのセッションの要約は最小限にして、むしろ座長の立場で問題提起をしていただきたい。それによって会場の皆様とご一緒に時には極めてシビアに、現実的に、あるいは時には壮大に21世紀のアジア、できればその中で日本の果たすべき役割というものをお考えいただきたいと思います。
なお、最初に申し上げましたように、そしてパネルの途中でも出ましたように、アジアを語る時に中国の方がおられないと不十分である。これは努力しましたけれども、今回は実現しませんでした。だから先ほど五百旗頭座長がまとめられたように、将来中国も参加できるような状態で、このシンポジウムが終われたらというふうに思っております。ご協力、よろしくお願いします。
それでは、パカセムさん、よろしくお願いいたします。
●ピシット・パカセム(セッション1座長)
総括セッションのタイトルは「アジアの明日を考える〜我々は何をなすべきか〜」となっています。グローバライゼーションは、次の世紀においても続くだろうというのが私の予測です。どのような形、どのようなパターンで進むかは依然として不鮮明です。しかし、世界は科学、技術、そして情報と共に、よリグローバルなものとなるでしょう。世界はより地球村としての様相を呈するでしよう。
何点か付け加えたいと思います。
一点目は、文化に大きく関するものです。アジアの経済混乱は、このアジア地域に大きな変化をもたらすでしょう。この変化とは経済文化の誕生を意味します。アジアの多くの国々にとっての新しいパターンは、急速に進むグローバライゼーションの過程と歩調を合わせたものとなるでしょう。特に、門閥世襲制に基づいた企業は、一般市民の所有者に、取って代わられ、解体され、所有者と経営者は区別されることになるということを強調しておきたいと思います。このためにも、アジアでは、企業統治システムを強化する必要があります。社会をよりよく統治するには政治や国だけではなく、企業レベルでの企業統治も必要です。アジアの今回の危機は、アジアではまだ企業の企業統治が十分でなかったことを物語っています。市場による企業統治とは、通常、企業内部にチェック・アンド・バランスの体制を敷く過程とメカニズムを意味します。経営陣がその決定に対して、責任を持つようにすることが、アジアの財政部門には特に必要です。
二点目として、北東アジア及び東南アジアの高度成長持続の可能性が再評価されつつあることを指摘したいと思います。高度成長の将来をめぐる不透明感が依