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的に言うと国家というものが理性の体現のような、それも一つの近代の顔なんですが、もう一つの顔は個人の価値であるとか、よリアングロサクソンの社会が重視する価値でありますが、そういうものがもう一方にあって、それと重なる形で経済というものの領域の分離が成り立っている、この3つが近代だというふうに考えますと、私たちの近代化というものも、西欧自体は3つを同時に進めてきたような感じがいたしますが、その近代を一歩遅れて学習したアジアの目から見ますと、どちらかと言うとこれを時系列的に学習してきているような気がするわけであります。最初に西欧の圧倒的な軍事力を持つ近代国家にやられましたから、それに対抗するためにまず国家を強くしようとする。それを20世紀の半ばぐらいかけて一生懸命やってきたのがアジアであり、でもその強い国家をつくるためにはやっばり経済というのが大事なんだというのを遅れて学習して、戦後には強い経済を求める、そういう近代国家の第2の側面、その強い経済を築くためのいろんな努力をやってきたのがアジアの学習の第2段階だと思いますし、それがある意味では曲がり角、一つの変遷の時期に差しかかって、これから近代の残されたもう一つの課題、側面である市民社会を築いていく、これまで築いてこなかったということを気づき、それが課題として出てきているのが今現在の私たちの時点なのではないのだろうかということが、私のおおざっぱな問題提起の大枠であります。そういう観点から、お配りしたお手元のレジメ、要約もそういう形で書いたわけであります。

それを全体の問題、認識の枠組みとしまして、アジアの国際関係について、もう少し一言、二言、お話しして終わりにしたいと思います。

アジアの国際関係については、本当は今日のセッションまで話は出ないはずだったのですが、第1のセッションから白石先生が積極的に出してくださって、言うことがかなりそちらで消化されたような感じもいたしますが、 どちらかというと白石先生は東南アジア的な視点からのお話のように、私には理解できましたので、私は、韓国が含まれている北東アジア的な視点から、東アジア、アジアの国際関係というものの特徴を一つ、二つ指摘すると、どういうことになるのかを申し上げたいと思います。

通常国際関係で、国際政治のいろいろなセミナーであれ、シンポジウムであれ、本当はよりテクニカルな話、ARFであるとか、APECであるとか、四者会談とか、六者会談とか、そういう話のほうが具体的な事実があってお話ししやすいのですが、ここでおおざっぱな話だけをさせていただきたいと思います。

特に韓国が置かれた北東アジアから見ると、アジア全体においても、ある意味ではとりわけ強い国家であるとか、あるいはナショナリズムに対する執着とまで言えるような、そういう関心が非常に強い状況がありますが、その歴史的、構造的要因というのがいくつかあると思います。

細かいお話をする時間はありませんが、これは例えば北東アジア、あるいはアジア全体において、国際関係の最も構造的な問題の一つは、乱暴な言い方で恐縮なんですが、アジアにおいては実態としてまだ国際関係が平等になっていないわけです。いろいろな帝国が依然として残っているのがアジアであります。中国、インド、北方のロシアというのは解体しかけているわけでありますけれども、依然として残っている帝国であって、ヨーロッパのようにいくつかの帝国が戦争を経て、二、三百年かけて崩れてきて、大体似たようなサイズの民族国家、国民国家に分かれていく。それによって国際システムのイメージも割と対等なイメージがつくられやすい。

それに対して、北東アジアは国のサイズが比較できないほど圧倒的な不均衡がある。これが大きい国のほうにおいても、あるいはその隣にある小さい国においても、お互い国際関係のイメージを著しく歪めている部分があるということを申し上げざるを得ないわけです。依然として大国主義的な考え方が残っておりますし、それに対抗するためにも必死にナショナリズムに頼ろうとする、そういうメカニズムが構造的に存在するということを感じるわけであります。それがどうしても北東アジアにおいては大きな条件として存在しているような気がするわけです。

また、その結果として、アジア、特に北東アジア、主には朝鮮半島の2つの国などが代表的だと思いますが、そういう状況の中ではいわゆるリージョナリズム、地域的な枠組み、地域秩序というものに対して、必ずしもプラスシンボルではないということが事実として考えなければならないと思うのです。

もちろん言葉で「地域協力」とか「秩序」とか言いますけれども、少なくともアジア、北東アジアで見ると、これまで私たちが経験した地域秩序というのは、往々にして垂直的なある種の覇権的な秩序だったというのが現実であります。中華秩序はそうでありましたし、西欧列強による植民地支配も大国的な秩序であります。また途中で終わりましたが、大東亜共栄圏的な秩序の試みもありました。典型的に韓国の歴代政権、戦後の政府の対外政策を見ても、つい最近まで地域主義

 

 

 

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