は、香港でなく広東省の人々が掌握しており、これが中国に影響を及ほしています。香港には中央銀行がありません。香港では、通貨管理機関が運営されています。香港ドルは、すべて米国ドルという強力な支援を享受しています。通貨管理機関は、自国で発行する紙幣硬貨を支援するための十分なドルを保有していることが必要です。香港は、ドルを通貨として市場に参入します。香港が喘いでいますが、香港はそれを承知しています。また、香港はジレンマにも直面しています。中国本土はいわば小さな香港です。私は二つのシステムをもつ国家と言いましたが、私たちが香港を守るのでなく、香港が独力で身を守る必要があると思います。
香港は、とてつもなく大きなジレンマに直面しており、香港ドルの下落は止められないでしょう。香港は、単に香港であるにとどまりませんが、中国でもありません。香港はアジアの金融センターです。すべての国際銀行が香港に支店を設置しています。なんらかの事態が発生すれば、国際銀行は香港から撤退し、シンガポールに移るでしょう。そうなれば、香港の金融センターとしての機能は崩壊します。国際銀行の撤退による影響は、計り知れません。東京は金融センターではありません。現在のアジアの金融センターは、香港とシンガポールです。金融センターの国際的な影響力を考えれば、単純に割り切ることはできません。金融センターは、価値が膨らみ過ぎた危険を孕む形で、既に市場に展開しているのです。
●座長:原
中国、香港の経済の問題にまで言及していただきまして、ピシットさんの言われますように中国も大分問題を抱えておりまして、その辺もまた午後のセッションでと思います。
東南アジアの国々というのは自分の国を強くするという努力を、この通貨危機にもかかわらず続けているように思います。一例だけ挙げますと、 ドクター・ピシットがNESDBの長官であったときに、先ほどの話じゃないんですけれども、みんな証券会社と銀行に行くような学生ばっかり育ててもしょうがないと、もっと技術者を育てないかんということで、東京大学の工学部に是非力をかしてくれといわれ、それを実現するべく、現在プロジェクトが動いております。
そんなふうなこともありまして、ASEANの国は通貨経済危機と同時に、やっぱり物づくりとか、そういう物づくりの基礎条件としての人材育成といった領域で、ちょっと長期を見据えたそういうこともやっているということだけつけ加えて午前中のセッションを終わりたいと思います。