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ある年にアメリカの研究費が3分の2ぐらいになったので、なぜか聞いてみますと、アメリカの人は全然研究費は減っていないと言うのです。それはドルだからで、日本で科学技術庁が出したレポートはみんな円なので、IMFで換算するとこんなになるわけです。それで、科学技術庁もその後は全部いわゆる購買力平価で表すようになったのです。購買力平価というのは、御承知のようにガソリンとか水とか、同じような性質のものを集めてユニット単位でいくらで買えるかということから決まるのです。そうすると、日本の場合OECDがやってる購買力平価というのは1ドルが180円とか170円ぐらいなのです。これは比較的安定して動いています。私は、これがマスターになるべきではなかろうかと思います。そういうことができるのであれば、ソロスさんが来てひっくり返して、皆がこういうふうに周章狼狽することはないと思うのですが、それは私の願望みたいなものですから、そういうことだけちょっと申し上げたい。

 

●パカセム

第一に、これらの規制されざるすべての金融移動から身を守るには、まず私たち自身が強くなり、私たちの力を強化することが最善の薬です。これらの金融移動は、弱者のみを狙います。「金融ウイルス」と呼ばれるのはこのためです。ポンド、ペソ、そして弱体化した東南アジアを狙います。経常赤字、通貨価値の高騰など様々な兆しによって、経済が弱っていることが露呈されてしまいます。より柔軟かつ対応力のある為替制度の構築が急がれます。ドルが世界を圧巻している今日、ユーロドルや将来の円などの国際通貨の受け皿を増強する必要があります。日本の円ゾーンや円ブロックを非難するならば、口に出して言えばよいのです。賛否はどうあれ、ユーロはマルクブロックです。マルクによって、ユーロ通貨のすべてが決定されます。160名のドイツ人がアジア開発銀行総裁に対し、「アジアの堕落を止めたらいかがですか」と皮肉りました。幸い、私の隣りにイギリス人がいました。マーガレット・サッチャーの補佐官ジェームズ・パワー氏です。彼は「私が代わりに答えましょう。ドイツではイタリアの収支をどう計算していますか。イタリアのGNPの60%が、いわゆる闇市場で、どうすることもできない状態にあります。これは、何もイタリアだけに当てはまることではありません。」と返答しました。継続的な経常赤字を許してはなりません。私たち自身が強くなり、柔軟に対応できる為替制度に進行させる必要があります。

第二に、監視システムに関してですが、私はコントロールという言葉は使いたくありません。コントロールという言葉は強すぎます。規制による対応と言った方が、より適切です。規制による対応には、三つのレベルがあります。まず国際的なレベルです。これが、WTOやIMFでグローバリゼーションが支持されている理由です。しかし、グローバリゼーションー辺倒の姿勢は問題です。弱い者を守るための規制制度が必要です。国際法のような規制に関する法律をIMFとWHOが立案すべきです。IMFとWHOは絵に描いた虎のようです。WTOは、なんの力も持っていません。これが国際的なレベルです。

次に、地域的な対応です。この場合は、アジアをそれぞれの国単位で考えます。国家は混乱した通貨統治に対する支配力を失いました。私たちはグローバル化せざるをえません。それゆえ、地域においては、地域的対応を集団的に結集する必要があります。そのために、タイでは財務省と通貨研究機関が協力して、この問題を研究していることは喜ばしいことです。規制されざる金融活動を何らかの方法で規制するには、どのような地域的対応を創出すべきでしょうか。

最後に、二つのシステムをもつ国家、中国についてです。中国は正式の貸し付け金の総額を5,000億ドルと算定しています。これに対し、タイは300億ドルです。金融改革の実施が必要な場合、ビックバンのような大型のものは、世界が不況に陥ることを意味します。米国はそれを望んでいませんから、中国に対し、「平価切り下げは避けよ」と要請しています。非常に滑稽なことです。元の価値は既に膨らみ過ぎています。米国では、サマーズ財務長官に対し、「平価切り下げは動揺を起こす危険性があるので、切り下げないでもらいたい」と要望する声があります。中国の有利な点は、資本勘定がいまだ交換性を備えていないため、資金移動を規制することができる点です。元には交換性がないのです。中国には経常黒字があります。中国の外貨投資は、海外での華僑からの投資によります。一方、中国の弱点として、工業における過剰生産能力、脆弱な価格状態などによる種々の問題が挙げられます。しかし、幸いなことに、インドのように現在の資本勘定には交換性がありません。世界市場に進出する場合は、まず準備が整ってから進出した方が無難です。必要条件がすべて整い、準備万端であることが必要です。私たち東南アジアは、準備も整わないまま無我夢中で世界の荒波へと船出しました。それが私たちがいま喘いでいる原因です。香港が中国に返還され、香港の平価切り下げが求められています。香港ドルの60%

 

 

 

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