ことと、市場が教えてくれる安定的な相場ないし水準というのがわかるまでにどのくらい時間がかかるかという話ですし、その中で動き回っている短資のお金は、例えばタイの国益のため、経済発展のために動き回っているお金があるはずがないんですね。短期的な利益しか考えていないということなんだろうと思います。したがって、ある種の政府の介入、あるいは規制等々は今後とも、アジア型という名前をつけるかつけないかはともかくとして、発展段階に応じた格好で考えていかなければならないということだろうと思います。
3つ目は、そのオリジナルな協力機構というのを考えていこう、これはそのとおりだと思いますし、ピシットさんがたくさんリフレインしてくださったので、いろいろ申し上げることはございませんが、マクロ政策の話し合い、相互理解、冷静なアドバイスができるような場、こういうところから始まると思います。これが次の危機の防止ということを担う役割を持つ機構になると思います。
それから、まさかのときの緊急時の資金動員力、これも1,000億ドルとおっしゃいましたけれども、そのくらい必要かなという感じも持っています。
もっと重要なことは、メンバー国、アジア国どうし相互に自分たちの通貨をうまく使うということ、それを目的にしたいろんな手段づくり、機構づくりというのを、この新しい機構の中で考えていく。例えばインドネシアの輸出でタイの輸入が、ドル建てニューヨーク回りで決済せざるを得ないというのをやめましょうということは、メンバー国通貨同士の多角的な為替、あるいは資金の決済の機能を、この機構が担ってもいいし、あるいは傘下に持ってもいいと思います。
それから、もっと簡単に言えば、高い貯蓄率を相互に持っているんですけれども、この高い貯蓄の海外的な運用がドルの中だけであるというのもどうかということで、外準の多様化の中で相互に、アジア国同士がアジアの貯蓄を使い合うというような方向にも考えられていくだろうと思いますし、為替政策の方で言えばこれまでに比べてドルから離れます、バスケットになるでしょう。そのバスケットに対しての安定的な推移をポリシーとするならば、そのバスケットの中の共同化、コモンバスケット化みたいなものから実質的な話を始めたらいかがかと僕は考えています。このコモンバスケットそのものをアジアの共通な、例えば計算単位みたいなものにしていく。さっき申し上げた多角的な決済システムの中で、この計算単位の決済そのものを受け持ってもらえれば、ということは欧州においてはECUというのをつくり出して、そのECUの決済の場をBISが提供したと、こういうようなことにその共通点を求められるんですけれども、この計算単位を商行為の中で使っていくというような展開、展望もあり得ると思います。
最後に、日本のすべきことというのは、もう大変たくさんあると思います。万が一IMFに日本が行ったら、IMFはどういう条件をつけるだろうか、やや知的な演習を原先生としたことがあるんですけれども、12月に同じようなエクササイズをマレーシアがやった、マレーシアはIMFに行かないけれども、行ったらこういう条件がつくであろうというのを自分で明らかにして、それで新しい政策として発表しております。それを見て、日本がIMFに行ったら何を言われるか、やはりそれは内需拡大と、内需主導の経済成長路線に戻せということを最大に言われるだろうと思いますね。それはIMFにとっては困ることだと思います。さっきの逆ですから。ただ、日本はともかく、それが一番求められているということ、あのIMFですらそう言うだろうというぐらい求められているということを腹に据えてかからなければならないだろうと思います。
東京市場と円の使用の便利さをもう少し大きくしてよくしていこう、この円の国際化、東京市場あるいは日本市場の国際化、これについてはまだまだやることがたくさんありそうです。円はこれまで調達市場、お金を借りる市場としては比較的よかったと僕は考えていました。それは、お金は幾らでもありましたし、今後も資金の輸出余力はしばらく続くでしよう。それから、金利は延々と安いんですね。財団法人をやっていると死ぬほど安いわけです。その金利の安いお金が幾らでもあって、かつ過去2、3年のことを言うならば、円は時には切り下がってさえくれるというんで、こんなにいい借り入れ通貨はなかったんですが、実はせんだってタイの友人から、円建てBA市場をもう一度考え直せと言われて、これは何となく正面から一本とられた感じがいたしました。円を使ってくださる人たちが東南アジアの中に増えてくるというのは、日本にとっても彼らにとってもいいことなんだろうと思います。それは資金がたくさんあって金利も安いということがありますし、ただその中で貿易信用、貿易にかかわる金融を、ほとんど制度金融的に日本の中で再割引市場、リファイナンス・マーケットというんですけども、それを日本の中で円建ての貿易金融の再割引市場を考えると。これはちょっと私ども等閑視してきたポイントかなと思っていますし、円建てBA市場というのは10年ぐらい前につくって、4年ぐらい前に死んだ