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もう一つは、私は地球環境分野ではなかろうかと思っております。

地球環境の問題につきましては、もう時間の関係で多くを申しませんが、昨年COP3が京都で開かれたことは御承知のとおりでございます。ただしこのCOP3は、いろいろ問題点も残しました。つまリアメリカが、アジアの発展途上国が何らかの公約を出さない限り批准しないという問題であります。いわゆる南北問題であり、持続的な発展、サステイナブル・ディベロプメントというのをどういうふうに実現するかという問題でございます。日本でもこの問題につきましては、先進国の一員といたしまして数々の試みがされております。また、ODAの予算の中に地球環境問題の技術移転を図るということも積極的に対応されているわけでございます。

地球環境問題の最終の解決というのは、非常に長期かつ忍耐強い対応が要求されることはもちろんでございますが、特に新しいエネルギーの開発ということをやらなければ、従来のような原子力、あるいは化石燃料に対応する方向だけでは、コンセンサスを得ることはできないわけでございます。

昨今はクリーンエネルギーの創出ということで、いろいろのものがいよいよ動き出してまいりました。その1つだけを御紹介をいたしまして、私のお話を終わりたいと思うわけでございますが、それは、中国のシルクロードに展開するいわゆる砂漠地帯に、大型の太陽禹光発電装置を建設するという動きでございます。まず現地の砂漢を使って緑化するということからスタートいたしまして、余剰の電力を都市に送り出そうという考え方であります。これは既にいろいろのところで小型のものが実証化されつつありまして、いよいよ大型のものに移ろうとしておるわけでございます。97年の4月に関西財界が訪中いたしまして、私から李鵬首相にお目にかかってこのお話を申し上げたところ、大きな関心を示していただきまして、この計画は中国、日本の大きなプロジェクトになろうとしております。現在FS(フィジビリティスタディ)の段階でございます。これがその構想の一つでございまして、一つの円が1キロメーター、直径が2キロメーターの発電所でございます。これを西暦2030年までにどんどん建設していく予定ですが、太陽電池というのは、建設しながらでき上がったものをつなげば直ちに稼働するという、非常に便利なところがございます。全部が完成しないと動かないということはございませんので、周囲に地下水をくみ上げてグリーン地帯をつくります。ところが、非常に膨大なエネルギーが出てまいりますので、これを通常の送電線で遠距離の方に輸送する、この長距離の電力輸送、つまリエネルギー輸送にも超伝導を使うという構想がもう既にございまして、超伝導電送ですね、それをいたしますと、長距離を輸送いたしましてもほとんど電力のロスがないというメリットが立証されております。こういったものが2キロメーターの直径の1つで大体20万キロワットの電力が発生いたします。トータル約2億3,000万キロワットの太陽発電所を西暦2030年までにつくるという計画を完全にFSする予定でございますが、十分にエネルギーの供給とそれから経済性を保つことができるということも実証されつつあります。こういったことで、私どもは途上国の大きな問題点を解決をするための一つの具体的な動きというものを御紹介したわけでございます。

アジアの経済圏の将来ということは、言うまでもなくその地球環境問題ということでございます。この新しい技術を一日も早く日本で完成して、途上国へ技術移転するということが長期にわたってのアジア経済のグローバリゼーションの、あるいは地球環境問題の完結ではなかろうかと考えております。

 

●座長:原

どうもありがとうございました。

経済というのは、単なる金もうけではないと。物づくりが大切で、そのために技術というのが非常に重要だと、これは改めて痛感させられたいいお話をありがとうございました。

また、後でいろいろ御議論があるんではないかと思います。

お二人の報告に篠原さんの方からよろしくコメントをお願いいたします。

 

●篠原 興(財団法人国際通貨研究所専務理事)

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篠原でございます。

私が30年おりました東京銀行の中でも、アメリカ、ヨーロッパで長く仕事した連中というのは、そのグローバライゼーション、アメリカナイゼーションに非常に親近感を持っている連中が多うございますし、私は逆にASEANの中で8、9年住み暮らして仕事をしたということもありまして、どこか通常の日本人よりはアジア人といいますか、ピシットさんに近い皮膚感覚を持ったのかななんて思いながら、私の考え等を幾つか述べたいと思います。

今回の通貨危機、97年の7月タイから始まりました、これがコンテージョン、伝播というコンサイスの辞典

 

 

 

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