おりますが、今後4月に開催されますASEMで主要議題として取り上げられ、中期的な対応が検討されるということになっておりますが、私どもはこれの行く末に大変大きな関心を持っているわけでございます。
こういった各国の経済危機が発生してまいりますと、いろいろの問題がたちどころに顕在化してまいりました。現地からの報告の一例を申し上げますと、例えばAPECは、大阪でも過日サミットが開かれましたけども、この2003年には関税をゼロないし5%にするという構想が中心に動いてまいりましたが、タイの通貨危機が発生いたしますや、タイやマレーシアでは通貨の下落に対応して輸入税が早速引き上げられました。例えば、10月15日からタイ政府では10%の特別関税を実施いたしました。すなわち、すべてのインポート・デューティーが10%上がるというわけです、すべての品目に。その中でも、特に時計とかカメラというものは5%が30%になるというような大幅なアップがされております。マレーシア政府も同じく10月17日には冷蔵庫とかフリーザーとか、小物家電などの輸入税を、これは25%から30%へと、一律5%アップいたしました。特に、電子レンジなんかは5%から30%に大幅に上げておるわけでございます。電子レンジは今や東南アジアが全世界の製造の90%近くを占めているのでございます。
こういったことは単品のビジネスだけではなくて、将来のAFTA構想というものを描きASEAN諸国並びに日本の企業が現地で水平分業を計画をしておったわけでございますが、それに重大な影響を与えつつあります。私は、しかしアジアの将来ということに対しましては、大変楽観的でございます。今回の危機は、アジアの諸国にとって大きな問題であることは疑いのない事実でございますが、金融部門の立て直しを図るとか、インフラストラクチャーを整備するとか、今まで以上に付加価値の高い技術集約型の経済に切りかえるとか、そういったことをやっていくならば、アジアの経済変動に伴う景気の後退というのは、21世紀の新しい発展への障痛であると考えておりまして、今を乗り切ることができれば、間違いなく21世紀は再びアジア太平洋の新しい繁栄の世紀になるものと確信しておるところでございます。
ここでちょっと長期的なアジアの展望について触れてみたいと思います。何となれば、この英文のタイトルは「FUTURE」という言葉が出ておりまして、これについてお話を申し上げたいと思うわけでございます。
さてまず第1は、アジアの産業振興をどう図るかということでございますが、短期的には先ほどお話がございましたように、日本があらゆる部門の規制を撤廃して、日本のマーケットを完全にオープンすることだと御指摘がございました。私は、まさにこれは一つの大きな方向であることは間違いないと思っております。その一つのあらわれといたしまして、現地の生産は非常に高度化され、品質も上がってまいりました。マーケットとして厳しいのは、日本のマーケットでございます。日本ほど商品の質、コスト・パフォーマンス、信頼性、アフターサービス、こういったものに厳しいカスタマーはいないわけでございますが、こういった厳しいマーケットヘの輸入ができるまで成長してまいりました。したがいまして、最近は日本への再輸入が大幅に増えつつあります。これは大変喜ばしいことでございますし、有望な分野ではなかろうかと思っております。
加えて、最近はテレビとかオーディオ、冷蔵庫のような、いわゆる成熟した商品の技術移管だけではなくて、ハイテク分野、すなわちコンピュータとか半導体とかビデオ部品、こういった幅広い分野の技術移転が行われるようになりました。御承知かもしれませんが、韓国がDRAM、つまり半導体メモリーの分野で、アメリカ、ヨーロッパに次いで非常に強力な製造体制を完了いたしました。次に昨年は台湾が、DRAMの巨大な生産拠点になりつつあります。1兆5,000億円ぐらいの投資が昨年1年間に行われまして、64メガのDRAMの生産が本年から大量に行われる予定でございます。この辺が重大な影響を日本の業界に及ぼしまして、我々の業界の大手がいずれも生産を延期するか、中止するということになっておるのは、そういった理由でございます。
このように、最新の半導体ビジネスが刻々とアジアの地域に移転されつつあるということも、ぜひ将来方向として充分理解していただきたい点でございます。
さて、アジアが我々日本の企業にとって、あるいは製造業にとって極めて重要な拠点であるということは申すまでもございません。アジアでは、56.8%、北米では21.6%、ヨーロッパでは14.3%という割合で、製造業が進出をしており、アジアは443社と、非常に高い水準でございまして、そのうち約8割が東アジア地域に集中しております。またさらに、その過半数、184社が中国へ進出しております。こういったことがこれからの我々の短期、長期のビジネスに非常に大きな影響を及ぼすということを御理解いただきたいと思います。