を、再び米国国内に引き起こし、この場合も、円とドルの為替レートを操作するというものです。第三世界も、貿易不均衡を調整するために、円とドルの為替レートを操作するのは間違いであることに、日米は気づくべきだと考えています。しかし、アジア諸国のいずれもが抱える対日貿易赤字と対米貿易黒字の問題を是正するためにも、日米の経済関係の新たな時代の調整を図り、日本が農業部門とサービス部門の自由化に全面的に取り組む必要があるでしょう。同時に米国は、日本に対する二国間貿易制裁の使用を停止すべきです。将来の日米貿易紛争は当事者どうしで対処するか、WTOに委ねるべきです。
誰かが貿易赤字にならない限り、誰も貿易黒字にはならないという、いたって単純な図式がここにあります。もし近い将来、米国が貿易赤字を管理する力を失えば、アジア、特に日本と中国の貿易黒字を管理する力が弱まり、自国製品に対する需要が極度に落ら込むでしょう。それゆえ、ここ5年間の円に対するドルの強さは、ドルに結びついたアジア通貨、特にバーッ、ウォン、リンギ、ルピア、ペソの為替レートの不均衡という問題を発生させ、アジアの民間企業がドル借り入れに依存するという状態を生み出しました。アジアの銀行はドル基盤を備えていないにも関わらず、国際的なドル融資への参画にも極めて熱心です。アジアの地域貿易取引と地域投資取引でドルが優勢な場合、投資ドルの流れが米国へ引き返している時にはドル需要が拡大されます。そしてついに、アジア通貨のドルヘの結びつきが、今日の通貨崩壊で断たれてしまいました。
つまり、今回、アジアが必要としているのは、旧秩序の回復ではありません。アジア諸国は、ドルという単一通貨、いわゆる万能ドルに対する安定性よりも、むしろ自らの通貨の受け皿に対する安定性を求めるベきです。アジア諸国は、自らの通貨の受け皿を多彩なものにし、将来に向けた準備資産の基盤を広げる必要があります。アジア企業は、将来の貿易決済において、円やユーロ通貨といった、ドル以外の主要通貨を運用できるように準備を進める必要があります。同様に、日本とヨーロッパ通は、それぞれの通貨の役割が将来高まることで、新たな責任あるいは義務に対処する準備を進めなくてはなりません。これらの国々は、世界の流動資本の洪水と枯渇を防ぎ、アジアにおける安定した経済成長を徐々に推し進めるといった、重要な役割を任されているのです。
●座長:原
非常に重要な指摘で、ぜひ後で大議論をしていただきたいと思っております。
1点だけ、ピシットさんの言われたことを補足しておきます。私も今外国為替審議会で議論をしてるんですが、IMFのアジアヘの処方せんというのは間違えているのではないかという議論が相当強く出ております。端的に言いますと、アジアの危機は政府の財政が赤字で危機になったのではないと。ラテンアメリカは財政赤字だったわけです。ところが、どうも処方せんを間違えてるんではないかということが議論になっておりまして、このあたりをまた後でぜひ議論をしていただきたいというふうに思っております。
それじゃ、2人目のスピーカーとして山野 大さん、ピシットさんの話は通貨とか、そっちの方だったと思うんですけど、山野さんの方からもうちょっと生産の現場というようなところでのお話をいただけるんじゃないかと思います。
●山野 大(三洋電機株式会社代表取締役副会長)
昨日の会議に私も出席いたしておりまして、山崎先生から非常に明快なお話がございました。
1つは、金融経済と、それから製造経済と2つの流れ、これに対する御指摘がございました。今、原先生からお話がございましたように、私は主として、本日は製造現場あるいは製造会社の立場から、アジアの経済というものについての現状、将来についてのお話を申し上げたいと思っております。
きょうのタイトルの中で、日本語のところが「東アジア」と書いてありましたけども、私は特に中国と、インドの存在が将来にとって非常に重要であろうということをまず申し上げておきたいと思います。中国の代表の方がおられませんので、大変残念でございますが。
私は、きょうこれからお話を申し上げるのに、三洋電機の海外状況を若干御説明させていただきたいと思います。といいますのは、私ども三洋電機は、海外に工場を積極的に設立してまいりました企業の代表的なパターンになるということでございます。そのほかにも、製造業では自動車部門が非常に主でございますが、これは私どもとは若干違いますので、触れることは控えたいと思っております。
しかも今パカセムさんから金融を中心、にしたグローバリゼーションのお話がございまして、こういったことにも若千触れてまいりたいと思いますが、これはあくまでも製造業から見た金融というものの流れということを御理解いただきたいと思うわけであります。
もう一つは、オーバーヘッドを持ってまいりまし