セッション3
グローバリゼーションとアジア─東アジア経済の現状と将来
座長 原 洋之介 (東京大学東洋文化研究所教授)
報告 ピシット・パカセム (タイ、タイ投資証券会社会長)
報告 山野 大 (三洋電機株式会社代表取締役副会長)
コメント 篠原 興 (財団法人国際通貨研究所専務理事)
●座長:原 洋之介(東京大学東洋文化研究所教授)
おはようございます。
このセッション3は、「グローバリゼーションとアジア、東アジア経済の現状と将来」でございます。日本語では「東アジア経済の現状と将来」になっていますが、英語の方は「Asia」になっております。これは、話題の中心は東アジアということで、韓国、中国、台湾、プラス東南アジアということになると思うんですけれども、東アジアの中に普通含めないインド等も議論の中では出てくるのではないかと思います。この日本語と英語のタイトルがちょっとずれていますが、そういう意味でお受け取りいただきたいと思います。
それから、このセッションでは、多分現在のアジアの経済危機、通貨危機と言われるものをどう考えるかというような話が一つの大きなトピックになるのではないかというふうに思っております。
議論がどういう方向に行くか予想はついていませんけれども、私の考えを少しだけ言っておきますと、幾人かのエコノミストは、アジアの危機はアジア型の経済システムがもう時代おくれになったことを暗示していると主張しています。日本も行政指導、大蔵省とか通産省の政府の介入をやめてしまって、規制緩和をしないといけないと。同じようにアジアもそういう政府が開発にかかわるようなシステムが今問われてるんだ、こういう議論が一方であります。
もう一方は、各国が資本取引の規制緩和をし過ぎたために短期の投機性資金が世界じゅうを投機で飛び回って、これが危機を起こしたのではないかというものです。こういう2つの一見対立している考え方があって、どっちのスタンスをとるかによって、アジアの経済の将来を考えるときに、シナリオとか、政策の選択は変わってくるように思います。そんなことがこのセッションの中である程度明らかになればいいのではないかと期待しているわけです。
あまり座長がしゃべる必要はございませんので、早速第1報告のタイからのピシット・パカセムさんにお願いしたいと思います。
ピシットさんは、NESDB、タイの経済社会開発庁の長官を長らくお務めになられまして、タイの経済運営には非常に重要な役割を果たされた方なので、おもしろいお話が聞けるんじゃないかと思っております。
●ピシット・パカセム(タイ、タイ投資証券会社会長)
私たちは昨日の議論で、グローバリゼーションとアメリカナイゼーションという2つの用語を、ほぼ同一の意味として使用しました。これは誤解を招く危険性がありますので、本日はアジアのグローバリゼーションというテーマから議論を始めたいと思います。現在アジアでどのような状況が発生しているのか、グローバリゼーションの未来に私たちはどのような行動をとるべきなのかという問題に対する議論です。したがって、本日は、グロバリゼーションに関して、3つのテーマもしくは3つの観点から意見を述べたいと思います(テーマの1つは現在という問題、残りの2つはグローバリゼーションの未来という問題です)。
一点目は、現在のグローバリゼーションが、アジアに極めて大きな影響を及ぼしたということです。いわゆる「アジアの奇跡」が、「グローバリゼーション」のもとで、なぜアジアの経済破綻へと変容したのか。経済破綻から抜け出すためには、しばらくの間グローバリゼーションから一時撤退すべきではないのか、という問題です。
二点目は、将来に関するものです。今後グローバリゼーションが進行した場合、グローバリゼーションの進行過程に対応し機能する何らかの地域機関が、アジアに必要となります。IMF単独の機能だけでは明らかに不十分です。この新たなグローバリゼーションに対応するには、現在日本やASEAN諸国で議論の対象となっている何らかの地域機関によって、IMFの機能を補強する必要があります。
三点目は、Japan trade and industry magazine誌に掲載された、日米の学者による近年の共同研究に関してです。