はいろいろな意味で適切であります。一つには今日のアメリカの植民地化がほぼ500年前から始まったということ、これが一つの重要なメルクマールになると思います。そしてアメリカにコロンブスがそこに到達しました。しかし彼が本当に行きたかったところはどこかというとインドであります。ところがインドではなくてアメリカに到達して、それは本来のインドより西にあるということで、ウエストインディア、ウエストインディーズというふうに名づけまして、本来のインド、彼らが行きたかったインドのことをイーストインディーズというふうに言ったわけですが、それこそどこかと言えば今日の海洋アジア、インド東南アジア地域であります。そこからアジアとヨーロッパ、日本が結ばれます。すなわちグローバルな関係ができ上がってくる。グローバリゼーションは一体どこで始まったのかというと、場所としてはすべての人たちを引きつけた、ペルシャ人もインド人もアラビア人も、インド人といってもベンゴーリとかグジャーラティとかいろいろな人がいるので「インド人」というのはちょっと問題があるかもしれませんけれども、そういう人たちが来る、またチャイニーズも来るし日本人も行くというようなところであったのです。そこにグローバリゼーションの起源があります。
では、そこからなぜ近代の大きな流れが始まったのかと言いますと、これは明らかに日本とヨーロッパが海洋アジアに比べて文化が低かったからである。文化は高いところから低いところに流れます。500年ほど前から200年ほど前、ないし150年ほど前の過程を見ますと一方的に物が海洋アジアからその両端のヨーロッパと日本に流れております。それが新しい生活様式を日本とヨーロッパにもたらしました。つまり新しい文化をもたらしたということでありますが、その内容はもちろん当初はコショー、香辛料というものを、14世紀の人口の3分の1を亡くすほどの大きな危機を持った黒死病というのがありますけれども、これの薬を求めるために行ったわけですが、行ったところに実は中国人も来ているし、ペルシャ人も来ているし、インド人も来ています。そうするとそのインド人は木綿を持っている、すばらしい染料も持っている、インディゴです。あるいは砂糖も持っています。チャイニーズはお茶を持っている、あるいは生糸を持っている、絹織物を持っている、美しい、ナイフでも切れないような陶磁器を持っているというふうなことで、そこで見たこともないような美しいものに接します。それに憧れて買います。インドのベンゴールのダッカモスリンなどは蝉の羽のように美しいということで、イギリス人を初めヨーロッパ人が最も憧れたものであったわけです。実際ヨーロッパの産業革命などはモスリンをどうやってつくるかということで、産業革命の一つの機械であるクロンプトンのミュールというものは「モスリンホイール」、モスリン紡ぎ車と言われたほどです。
ともあれそういうものを入れて、その見返りにヨーロッパ人と日本人は、武器ともう一つは銀を運んだわけです。ですから一方的に赤字であります。だから文化の高いところから低いところに流れるわけですけれども、低いところの者はそれを一生懸命力で奪うかお金で払う経済力、軍事力の面で大変な負担をしていたわけであります。
ではどういうふうにしてこの文化的な落差を解消するかというと、それは買わないで済むようにすることです。ではどうしたらいいか。自分たちでつくるということです。そういう方法で日本と西ヨーロッパ地域が初めてこの地上で生産を中心にして物をつくっていく社会が出現してきます。今までは銀で買う。それは流通世界であり多島海世界であるサウスイーストエイジアや海浮アジアでは当たり前だったわけですけれども、そういうところから買わなくて済むように自分たちの文明圏の中でそれを自給自足的していく。そういう経済圏をつくり上げました。その画期性をヨーロッパでは通常イングストリアル・レボリューション、産業革命と言い、日本の場合には労働を多投して土地の生産性を世界一にするということで、これはインダストリアル・レボリューションに対して、インダストリアス・レボリューション、勤勉革命と言うことができるかと思います。
生産重視の社会では、すぐに消費しないで貯蓄をして投資をする、つまり禁欲をしないと貯蓄ができませんから一種独特の倫理性が必然的にそこに伴うわけです。日本も同じで、働けば働くほど土地の生産性が上がるということで勤勉が徳になってくる新しい倫理観が生まれてまいります。ともあれちょうど200年ほど前に地球史上初めて生産指向型の社会が誕生したということであります。この時点までは文化の流れないし経済の流れは海洋アジアから英国、日本へというふうに流れている。ところが海洋アジアの文化を自家薬籠中のものにしたものは、今度は同じもののコピーですから流れ出ていくことができるわけです。どこへかというと、もとの源流へであります。海洋アジアヘ流れていきます。その結果そういう地域はどんどんと植民地になっていくわけであります。
さて、私は山崎先生にならって近代化は西洋化だけではない、もう一つ少なくとも日本にもヨーロッパに