がやってくると告げました。皇帝はそれぞれの民にこのことを知らせなければなりません。中国の皇帝は北京に戻り、悪い知らせが二つあると民に告げました。ひとつはこの世の終わりが来週やってくることで、もうひとつは神と接触してしまったことだ、と。インドネシアの皇帝はジャカルタに戻り、よい知らせが二つあると民に告げました。ひとつは神と接触できたことで、もうひとつは貧しい生活から解放されることだ、と。御静聴ありがとうございました。
●座長:パカセム
インドネシアの事例は、先進7か国蔵相・中央銀行総裁会議のテスト・ケースとなるでしょう。それは日本やアジアだけでなく、また世界のその他の地域にとっても大きな課題となるものです。インドネシアの問題は、我々の全てを試す時限爆弾でもあります。インドネシアよりも大きな二個目の時限爆弾は中国です。グローバライゼーション、経済の自由化、世界のアメリカナイゼーション、アングロ・サクソンの支配は、いまも厳しい慣行を実施しています。ウォール街を除いて、全世界が破産するでしょう。ウォール街はあらゆるものを握っています。格付け会社を持ち、国際通貨基金を裏から支えています。意思決定機関はもはや米国政府ではありません。ウォール街です。それでは次のコメンテーターとして、李教授、お願い致します。
●李 鍾 元(韓日、立数大学法学部教授)
この最初のセッションのタイトルは「アジアとは何か」だったと思います。そのコメンテーターということでありますが、今、白石先生の非常に刺激的な、新しい思考を啓発するようなご報告をいただきました。それに対して、コメント、リスポンスしなければならないわけですけれども、非常にスケールの大きいお話しなので、ここですぐ反応するというのは至難の技で、さっきからどういうふうにお話ししたらいいか、迷っているところです。しかも私の理解ではこの2日間のセッションで、最初のセッションというのはとりあえずアジアという一般的な話から入って、現在の危機などのお話しについて徐々にテンションを高めていくと、そういう理解をしておりましたが、いきなり現在の危機に関連するハイテンションの話がドッと出されて、また座長もエコノミストなので、そういう注文がありましたが、私はどちらかと言えばややそういう発題を踏まえながらも初心に戻りまして、アジアとは何かという話から始めさせていただきたいと考えております。
白石さんの今日のお話を一言で要約しますと、アジアはアジアなりのある種のリズムがあるのだということだと思います。それは近代化であれ、国際システムの変化であれ、それを3つのタイムフレームに分けて考えた場合に、より明らかになるのだけれども、このアジアというのはアジアそのものが独自のリズムを伴ってやってきているわけである、その点を見出さなければならないのだ、注目しなければならないのだという話だと思います。
私は結論から申し上げますと、6割ぐらい同意して、4割ぐらいは少し意見が違う、と申し上げなければならないと思うのです。それが何を言いたいのかということをお話ししたいと思います。
その前に、今日、白石さんはそれほど明確にはおっしゃらなかったのですが、アジアであるとか、東南アジア、あるいは拡張して言えばアジア太平洋とか、アジア太平洋の中に「・」を入れるのか、入れないのかという、その名前自体が持つ鋭い政治性、政治的性格であるとか、あるいは歴史的な意味付け、性格というものが非常に大きな問題提起の一つとして底流にあるような気がいたしました。
特に東南アジアというものに着目しまして、東南アジアという言葉自体がある意味では人工的につくられたものである、端的に言うとアメリカの冷戦戦略の産物である。つまり以前はアジアというと、アメリカのアジア認識では19世紀以来、ほとんど中国でありました。それが冷戦で中国があちらの側になった時に、中国を除くもともとは中華世界の一部だったものを東南アジアというふうに人為的に切り離してそういうネーミングをしてしまったと、これはすぐれて政治的なものであって、私たちがアジアという言葉を使うのか、東南アジアという言葉を使うのか、単純に地理的に思われる概念そのものが最近のはやりの言葉だと“政治的概念、ポリティカル・コンストラクト”というか、“歴史的概念、ヒストリカル・コンストラクト”というか、歴史的につくられた私たちの意識であるとか、ある種の価値観、ヒドン・アジェンダであるとか、いろいろなものによってつくられたものだということを強く指摘されたように思います。
そういう意味から見ますと、今度のシンポジウムは本当は非常に熾烈な闘いがある概念を仲良く配列されているような気がするのです。全体のセッションでは「アジア」というふうになっていて、そのアジアにオーストラリアからの方が何の疑問もなく参加されていたり、次の経済の話では主に“EastAsia”と英語ではなっ