優先的な貿易協定を締結すれば、アジアは、米国やヨーロッパからの輸入品への依存度を低下させることができます。日本はアジア近隣諸国での日本製工業製品の販売がより可能となります。また、アジア諸国から日本へのシリカやカラゲーエンの供給が可能になり、日本のエレクトロニクス産業が促進され、日本からの観光資源への投資が刺激され、優遇措置を享受することが可能となります。
C.人材開発を悪化させる犯罪の解決に向けた国際協力の必要性
児童虐待、労働の権利や女性・子供の権利の侵害は、生産にとって最も重要な要素である人材に対する犯罪です。特定の遠法行為の解決と訴追手続きの国際化が必要とされます。
例えばフィリピンで、オランダ人の旅行者が若干10歳の子供に罪を犯しました。彼は逮捕されて告訴されましたが、フィリピンを出国しオランダに帰国してしまいました。しかし、政府間の協力により、この犯罪が発生したのはオランダではなくフィリピンであったにもかかわらず、オランダ政府はフイリピン政府から提出された証拠をもとにこのオランダ人を起訴しました。彼は裁判にかけられ、有罪判決が下されました。いま彼は、出身国でない管轄区域外の場所で自分が犯した罪で監獄生活をおくっています。このような刑事事件を法的に秩序だった経緯をもとに実施できれば、犯罪防止と刑事訴追は一段と強力に推し進めることが可能になりましょう。
こうした国際協力は、麻薬関連の犯罪における情報収集、捜査活動、訴追手続きにも適用することができます。麻薬は若者を堕落させ、今後のアジアを支える最も創造力豊かな若者の層を破壊します。国際麻薬組織と闘うためには国際協力の高度化と政治的意志の強化が必要なのです。
最後に、経済や政治の一層の安定を図るため、経済協力と国際犯罪防止のためのアジア地域会議を設置することが必要です。財団法人大阪国際交流センター会長の大島靖氏や、アジア刑政財団(ACPF)理事長の敷田稔氏がこれまで取られてきたリーダーシップを支援し、さらに強力なものへとしていくべきです。これらの機関では、より効果的な犯罪の防止・規制と、アジアにおける確固とした刑事裁判制度の確立に向けて、国際的な取り組みが行われています。平和と秩序と安定を通して、アジアの経済発展を推進することができるのです。そこで私は、今回の危機にもかかわらず、アジアは将来へ通じる道であると申し上げます。アジア諸国の人々がエネルギーに満ち、迅速な景気回復へ向けた断固とした措置と、より効果的な犯罪防止策を講じることを願ってやみません。